「徒然海月日記」から海の話が含まれている日記のみ抜粋したバックナンバーです

2010年 12月5日(日) 晴れ

北東の風 おだやか 水温23度

 実は昨日も海況は穏やかだったのだが、前日に今オフ初めて1時間30分ほど走ったら、翌朝起きたときに節々が痛かったのだった。

 人間の体って不思議なもので、オフに突入した直後は、たった20分ほど走っただけでしんどかったものが、今では1時間弱ならなんともなくなっている。
 今オフ初めて1時間走ったときも、そのあとはけっこうしんどかったのに、何度か走ると体が慣れてしまうのだ。
 だから今回は1時間半でヘナチョコになったものの、もうこれで1時間くらいだったら屁のカッパ状態になっているはずである。そしてやがては、1時間半なんて無の境地で走れるようになるに違いない。

 そんなこんなで、当初の目標にはわずかに及ばなかったものの、ひと月経って、着実にウェイトは減少し始めている。
 体が少しでも軽くなると、走る際には非常に便利。もっと軽くなったら空を飛べるかもしれない。

 …って、空は飛べないので今日は海へ。
 海況から遅れること1日、体はすっかり回復していたのだった。
 9時過ぎだというのに、太陽は夏の朝7時半くらいの位置にあって、優しい光がおだやかに降り注いでいた。

 光が斜めになると、海中に入ってくる光は当然ながら弱々しくなる。そのため、夏に比べると実際以上に濁っているような感じがする。
 でもまぁ、流れがなくてよかった。それに今のマイブームはウミウシリターンズなので、海底を眺めている時間のほうが長くなるから、透明度は二の次だ。

 エントリー早々にうちの奥さんがメレンゲウミウシを見つけてくれた。
 が、ものすごく狭い隙間にムギョッと入り込んでいて、まったく絵にならないので無視。
 するとそのすぐ近くの砂底にこの子が。

 マダライロウミウシのチビちゃん。
 シーズン中、運がいいとたまに出会えるけど、目にするのはいつも大人の個体で、それもこんな感じでどういうわけかたいてい連結している。

 そんなわけで、こんな小さな子供さんなどこれまで見たことがなかった。
 なるほど、この頃に幼少期を終えて、すっかり成長した夏になると、大人の恋の季節が始まるってワケか。

 と勝手に解釈しながら見続けていると、彼はまっしぐらに(頭の向きはフラフラしつつも)進み続けている。
 はて、その先に何があるのだろう??

 …こういうことだった。

 彼が進む先では、もう1匹同サイズのマダライロウミウシがジッとしていたのだ。
 で、そのジッとしていたもう一匹のところへたどり着くやいなや、2匹はなんだか淫靡な感じで互いを確認しあい、挙句の果てにはすっかり仲良しになっていたわけである。
 …まぁ、仲良しっていったら聞こえはいいけど、つまりは交接状態に。

 なんだよ。てっきり冬の間は青少年期として過ごし、健全なる精神と肉体を培う季節なのかと思っていたら、思いっきり不純異性交遊しまくりじゃないか。
 あ、ウミウシだから「異性」はありえないか。

 その後、今度はコナユキツバメガイの黒タイプを見つけた。

 見つけたときはそっくりなオハグロツバメガイだとばかり思っていたのだが、海中でコナユキツバメガイだと断定できたのである。
 というのも、この子もまた、何かに向かってまっしぐらに這い進んでいるようだったのだ。
 その進行方向を観ると……

 見紛いようがないコナユキツバメガイがサンゴに乗っていた。
 両者の距離、およそ30cm。
 はたして黒君は愛しの君のところまでたどり着けるのか?

 はたして彼は、このサンゴのところまでやってきた。
 そして……

   

     

       

         

           

             

               

 おお、なんて大胆な!
 で……

 ハグ〜ッ!!
 人目をはばからぬ凄まじき愛情表現。
 広瀬武夫とアリアズナがもし日本で再会を果たせていたなら、きっとこんな感じで抱きしめあったに違いない。

 ともかく、これで別種ってことはないでしょう。
 というわけで、コナユキツバメガイの黒タイプ、初めて撮ることができたのでした。

 それにしてもまぁ、どいつもこいつもやりたい放題っちゅうかなんちゅうか。師走だなんだなんてまったく関係なく、ウミウシたちは実に自由に生きている。

 ところで。
 可愛く美しげなウミウシといえども、所詮はナメクジの親戚。その歩みとなればカタツムリほどでしかない。
 そんな彼らの歩みを、ジーッと海底で眺め続けた1時間………

 寒いッ!!

 おまけにこのところ少し痩せたこともあって、それまでピッタリフィットだったウェットスーツの首筋に随分隙間ができてしまって、23度にまで下がった水が、ちょっと体を動かすたびにチュルチュルチュルチュル……………。

 ……次回からインナー着ます。