20・
2月1日
チーターはヨンさまだった 至福昼寝をしたあとは、午後のサファリが待っている。 午後のドライバーもヘンリー&デビットコンビだった。同乗者は、Nさんご夫妻のほかに、今日ご到着のKさんが加わった。 今回がデビューとなるKさんは、昨日の我々同様、謙虚になんでもOKという返事だったが、せっかくなら、というノリのNさんは違った。 「ジャッカル&ハイエナ!」 …し、しぶい。 「…… difficult.」そう応えるしかないようだった。でも、明日遠出すれば観られるかもしれない、とも言っていた。 僕はもちろん迷わず応えた。 「Standing lion!!」 だって、まだ一度としてライオンが立っている姿を見たことないんだもの…。 「OK,ハイエナ&ジャッカル、&スタンディングライオン!!」 ランクルは今日も陽気に発進した。 今日も道々にいるマサイの牛たちが、水場で水を飲んでいた。 以後のことになるが、夕食で出た牛肉がとても味のある肉で、どちらかというとラム肉にも繋がる僕たち好みの獣的味わいのある肉だったので、ひょっとしてあの肉はマサイから直接仕入れているのかということをヘンリーに訊ねてみたのだが、どうやらそれは違うようだった。 かつてはアフリカの中原を支配していた強力部族だったマサイたちも、相次ぐ牛たちの疾病、蔓延する病気、そして西欧文明の進出というあおりをうけて、その力はまるで居留地を設定されて生きるアメリカのインディアンのような立場に成り下がっている。 僕たちはそうしてマサイの実情を気にすることなく牛肉やラム肉を食べているけれど、ハゲワシたちはシマウマを食べていた。 そういえば、シマウマの肉はやわらかいっていってたなぁ……。 ハゲワシがこうして無我夢中で死肉に群がっているとき、ライオンたちはやはり平和なひとときを過ごしていた。チビライオンをそばに従えたメスたちの群れからほど近いところに、またしても寝そべっているシンバが。 気持ちよさそうだ。 ヘンリー、また寝てるよぉ!! 「いい考えがある、車から降りて握手してきたらいいよ」 デビットがいう。 まったく、何を言うのかと思ったら。 ダチョウだ!! ヘンリーはやはり日本語で教えてくれる。 「だちょー」 いやあ、ダチョウってこういうふうにサバンナに普通にいるんだなぁ……。 これがかわいいのなんの!! 轍に沿って車が進んでいるとき、先でなにやら小さな黒いものがぴょこぴょこ動くものが見えた。 オオミミギツネだ。 そのほか、トピやエランド、バッファローのチビチビなどおなじみの(ってたったの3回目のサファリのクセに)面々に会った後、キリンさんをゆっくり見ることができた。 このあと、ブッシュをかき分け進むランクルの前に、意外な鳥たちが姿を現した。 ホロホロチョウである。 そして、今日もまた例によって無線情報が流れてきた。 本当だ、たしかにチーターが。 無線の内容によると、どうやら獲物を食べている最中だったとか。残念ながら我々の車からはその様子を見ることはできなかったが、たしかに口の周りに血がついている。 こうして見ると、チーターって案外大自然の中でたくましく生活しているように見える。でも彼らの現実って、実はこうだったりする。 なんとチーターに14台もの車!! それにしても、これで3度目のサファリなのだが、チーターは3連発だ。 こうして今日も、様々な動物たちと出会い、心ゆくまで楽しむことができた。 そう、まさかこの晩、また新たな野生動物との恐怖の出会いが待っているとは、神ならぬ僕の知る由もないことなのだった………。 |