アオリイカ
麗しき白妙の刺身編

 イカといえば、子供の頃でも普通に食べることができた寿司ネタだった。
 イカといえばイカだった。
 が。
 大人になると、同じイカでもピンからキリまであることを知る。

 このアオリイカがそのピンとキリのどのあたりにいるかというと、それはもちろん好みによるところ大なわけだけど、やはり多くの人が限りなくピンのほうに近い位置に置くだろう。

 美味いのだ。
 最近の研究によると、アオリイカにもいろいろあって、ひょっとすると我々がこの地で食べているアオリイカはナンチャッテアオリイカなのかもしれない。けれどその味、特に刺身となると、やはりコブシメとは一線を画するものがある。
 舌にしっとりとまとわりついてくるかのような官能的な食感、そして甘美なまでに濃厚な味………。

 シーズン中は産卵シーンを目撃することもあれば、水面付近に集合しているチビたちを見ることもある。
 それらのサイズからは想像もできないほどのものが、冬になると獲れるのだ。
 ただし、我々夫婦は夜はほとんど出動しないので、このアオリイカを食べるチャンスといえば、誰かが持って来てくれるのをじっと待つしかない。
 待っているだけで刺身が来る……
 世の中そんなに甘くはない。
 でも、ときには世の中も、このアオリイカの味同様濃厚に甘くなってくれるときがある。


よろず刺身仕事人・キヨシさん

 ご存知機関長キヨシさんだ。
 彼がビールを飲みたいとき、刺身を食べたいときに、たまたま貴重な犠牲者となってくれたアオリイカ君の冥福を祈るとともに、我々は機関長の登場に歓喜の涙を流すのだった。

生前のお姿

写真の子はまだまだチビターレです。

 


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