イセエビの刺身

 過去に何度か活けエビづくりという状態にしたことがあったものの、その写真を撮り忘れていたので、いつかそれを撮るまでは…とこのコーナーへの登場を延ばし延ばしにしていたのだが、ふと気づいた。

 普段自分たちで食べるときは、殻は出汁用に使ってしまうから、活けエビづくりにはならないのだった。

 というわけで写真自体はしょぼいけれど、正真正銘のイセエビの刺身である。
 ま、JAS的に正しく表示をするならカノコイセエビとかシマイセエビなどと記さねばならないのだろうが、そう書いてしまうとなんとなく品下がるのでイセエビと書く(実際、違いのわかる人たちが言うところによると、本場伊勢で食べるイセエビと沖縄のイセエビとでは味が違うらしい)。

 このイセエビ、もちろん沖縄でも高級食材である。めったやたらと食べられるものではない。
 が、清貧を極めた学生時代には、なぜか当たり前に食べていた。
 海に行けばいるのである。

 もっとも、いくら沖縄とはいえ30年前の海とは違うので、我々が学生の頃でもたくさんいる場所というのは限られていた。けっこう遠出をしなければならない場所で、それなりに気合が必要だった。

 でも、腕に覚えのある連中が数人いると、その夜の海岸べりでの宴は豪華になる。イセエビの刺身なんて、そういうときにわんさか食べていたから、こんなこと言うとバチが当たりそうだけど、実際食い飽きてしまっていた。履物はシマゾーリしか持っていなくとも、エビの刺身は飽食状態だったのだ。

 が。
 社会に出てそういう生活と縁遠くなると、イセエビ、それも刺身となるとサンシャイン60よりもはるか上空の高嶺の花になる。エビやカニといえば、レッドロブスターでしか出会えない食材になってしまった。

 そんな生活を経験してからこういう島に来ると、当然ながら食い飽きていたはずのイセエビの刺身への渇望感が復活する。
 ただ、僕らが越してきた頃の水納島には、イセエビの姿はほとんどなかった。
 かつてはたくさんいたらしいのだが、どこぞからやって来るウミンチュに獲られ尽くしてしまったそうだ。

 それから10年くらい経った頃。
 海の中でイセエビと出会う頻度が増えてきた。
 ハブも絶滅大量捕獲作戦から10年経てば生息数が元に戻るくらいである。エビだってそっとしておけば復活するのだ。

 幸いなことに、僕たちはシーズン中数々のゲストを連れて潜っている。当然、ガイドしつつもイセエビのリサーチは怠らない。
 そしてシーズンが終了すると……もしくは終了間際になると、そのリサーチの成果を活かすのである。

 いやあ、もうこれが…………美味いったらない。
 なんでただの筋肉がこんなに美味いのだろうか。
 なんでただの筋肉にこんな甘味が加わるのだろうか。

 食べられるために生まれてきたとしか思えない体のつくり。もっとまずかったら平穏無事に暮らせたのにねぇ……。

 イセエビーズ

とれとれピチピチエビ料理〜♪

 


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