水納島の野鳥たち

カシラダカ

全長 15cmほど

 2021年の秋に、カメさんたちのエサ採りで灯台方面を歩いていたところ、なんと羽にナンバーが記入されているアサギマダラを目にした。

 本土から沖縄まで長躯渡ってくる蝶は、全国各地で追跡調査が行われており、羽に記したナンバーを確認することによって、その蝶の渡りのルートがわかるようになっている。

 という話は以前から知ってはいたものの、実際にナンバーが記されているものを目にしたのは初めてのこと。

 世間でもナンバー付きに遭遇できる確率は極めて低く、あると言われていながら目にしたことはないチョコボールの「金のエンゼル」のような存在、と言うヒトもいる。

 いわばスーパーレアものだから、すぐさまポッケのジョニーを取り出したものの、アサギマダラの危険察知能力のほうが素早くて撮ることができず、追い風参考記録になってしまった。

 マボロシの金のエンゼル、なんとか数字を撮影して何かのお役に立てれば…と、その後数日通いつめた。

 残念ながら結局再会は果たせなかったものの、通い詰めたおかげで人生初遭遇となる鳥さんに出会えた。

 耕作放棄地となって藪になっているところの道端で、ピヨンと伸びているイネ科の雑草の穂先をジャンプして咥え、自重で地面まで垂れ下がらしてからタネだか実だかを食べているらしい。

 セッカほどのサイズで、色柄も似ているけれど、はて、セッカって道端でこのようにエサを摂る鳥さんだったっけ?

 その際撮った冒頭の写真を後刻見たオタマサは、ひと目見るなり「なんだかセッカとは違う…」という。

 さっそく調べてみたところ、どうやらカシラダカという名のホオジロ科の鳥さんであることがわかった。

 「ダカ」とついてはいてももちろん鷹とは関係なく、プチ冠羽のために頭が高くなって見えるため「頭高」というのだろう。

 カシラダカも冬に渡ってくる野鳥ながら、沖縄県内での観察例は少ないそうだ。

 初遭遇時はすぐさま奥の藪に逃げてしまったものの、この年はその後たびたび姿を見かけた。

 ときには電線に止まっていることも。

 ワタシが近づく前は地面でエサを物色していたのだけど、人の気配を察知するや、このように電線や木々の枝にいったん逃げていく。

 1度に1羽ずつしか観られなかったから、当初は同じ子を何度も観ているのかも?と思っていたところ…

 …路上に2羽いるところを目にした(写ってはいないけれど記憶ではさらにもう1羽いた)。

 初遭遇した場所とはかけ離れているし、その後の遭遇頻度からいっても、この年はさらに多数のカシラダカが滞在していたと思われる。

 で、気になったのが彼らの尾羽。

 止まっているときには見えないんだけど、飛び立つときに両サイドに白い帯模様が入っていることに気がついたのだ。

 実はこの数年前から、飛び立つ際に尾羽の模様がこうなっている小鳥を冬場にたびたび見かけていて、それが何なのかずっと気になっていた。

 それらはどうやらカシラダカだったらしい。

 …ん?

 ということは、カシラダカ、随分前の冬から水納島に渡ってくるようになっていたってこと?

 ところが翌年5月、そろそろ冬鳥たちも島滞在が限界の季節になっていた頃、灯台へと続く路上で、カシラダカに似てはいるけれどどうもそれぞれ違うように見える同サイズの鳥さんたちが、エサを求めて集まっているところに遭遇した。

 10羽以上いたなかから撮りやすそうなものをテキトーにパシャパシャ撮ってみたところ、それぞれ顔の模様が微妙に異なっていた。

 で、ワタシが近づくと彼らは距離を置こうと離れたところに飛ぶので、彼らが飛び立つところもエイヤッと撮ってみたところ…

 これまた白黒(厳密には黒ではなかった)クッキリ尾羽模様だ。

 パッと見が似ているこのテの鳥さんたち(ホオジロの仲間)の尾羽は、みんなこのような柄をしているのだろうか。

 ネット上には飛んでいる姿を写した様々な野鳥の写真がたくさんあるというのに、このテの鳥さんたちの画像といえば、どれも止まっているところばかり。

 そのため飛んでいる際の尾羽が図鑑やネット上の記事で確認できずにいたところ、実はビンズイもコホオアカも同じような尾羽となると、飛び去る鳥の尾羽の模様だけを観て「カシラダカだ」と認定するのは、甚だしくうっかり八兵衛かもしれない。

 そもそも、先に紹介している「飛び立つカシラダカ」は、ホントにカシラダカなんですかね?

 というわけで尾羽の謎は残るものの、この年人生初認識だったわりには、やたらと多い遭遇頻度のカシラダカ。

 この年だけのことだったのか、今後もたまにあることなのか、もう少し追跡調査をしてみよう。

 2022年~2023年のオフシーズンには、カシラダカも尾羽白帯模様の鳥も見かけなかった。