水納島の野鳥たち

メジロ

(リュウキュウメジロ)

全長 10cmほど

 「めじろ」という名前は文献的には室町時代から見られるそうで、スズメ同様日本人にはとても馴染み深い鳥のひとつでもある。

 ところが個人的には、スズメは子供の頃から慣れ親しんでいるのに対し、メジロにはとんと縁が無かった。

 メジロが「身近な鳥」になったのは、水納島に越してきてからのこと。

 メジロって、こんなにフツーにたくさんいる鳥だったんだ…

 …というオドロキも今は昔、今やメジロといえば、子供の頃のスズメと同じくらい身の回りに当たり前にいる鳥さんになっている。

 もっとも、南西諸島で観られるメジロは、正確には亜種リュウキュウメジロだそうで、ザ・メジロとはどこかが多少違っているのだろう。

 スズメよりも小柄なメジロは、スズメたちのように地面に降りたってエサを啄むということはなく、木から木へ渡り歩くように飛び回っている。

 ペアで行動していることもあれば、集団になっていることもあって、フィーバーしているのか、メジロの鳴き声で木全体がやたらと騒々しいときもある。

 木々の枝間で集会している様子は見づらいけれど、花の蜜が大好物なので、花を咲かせている木があるところ必ずメジロあり。

 我が家の垣根のハイビスカスの花も、メジロの大好物だ。

 そのハイビスカス好きが仇となってメジロが落命したエピソードはこちら

 うっかりすると落命に繋がるかもしれないハイビスカスとは違い、桜の花で意匠をこらしているのは遠山の金さんくらいのものだから、冬のメジロは安全に過ごせているようだ。

 ご存知のように沖縄の桜といえば1月半ばから2月半ばが旬で、花の蜜が大好物のメジロにとっては願ってもない大フィーバー期間でもある。

 おかげで桜の花さえ咲いていれば、メジロを撮るチャンスには事欠かない。

 ただし桜の名所ともなればそこかしこにカメラを携えた人々がいるから、のんびりメジロを撮ってもいられない。

 その点、我が家の借景になっていた隣家のウメおばさんちの桜なら、嬉々としているメジロを見放題だ。

 あいにくこの桜はウメおばさんがお星様になってしまったあとほどなく枯れてしまったので、なにげに二度と観られないシーンでもある。

 たくさんいてフツーに観られるメジロながら、姿をさらしてくれるのはもっぱら食事時ばかりで、スズメのようにみんな集まってお日様の下に並ぶということはまずなく(そのため「目白押し」の語源となったメジロの密状態も目にしない)、食事をしていないときは枝間の奥ということが多い。

 ところが春先には、普段のシャイな様子からは一変、目立つところで声高らかに囀っていることがある。

 10グラムあるかないかという小さな体で、よくもまぁこんなに通る声を発せられるものだ…

 …という声を動画で(風の音がうるさくてすみません、手振れもご容赦ください)。

 世の中には昔から「メジロ籠」なるバードケージが売られており、江戸の昔からこの籠があるのは、みなさんメジロのこの声を聴きたかったからなのだなぁ。

 花鳥風月を愛するヒトが多かったからこそ、メジロのための籠も存在するのだろう。

 けれど戦後の世の中は花鳥風月よりもビッグマネーを愛するヒトのほうが多くなってしまったから、もうメジロを捕ってはいけませんという世の中になってもなお密猟が横行し、メジロは高値で取引されているそうな。

 そのような一部の不心得者を除くと、今の世の中ではメジロの囀りなんてまったく身近なものではなくなっているのかもしれない。

 幸いにしてちょいと浮世離れしている水納島では、春になるとフツーに聴くことができるメジロソングなのだった。

 追記(2023年11月)

 空梅雨気味の5月半ば(2023年)のこと、カメさんたちのエサを採りに島内を歩いていたところ、ワタシの接近に驚いたのか、近くにあった軽トラから小鳥が飛び立ち、庇の下に逃げ込んだ。

 ピーピーという幼げな鳴き声からして、幼鳥のようだ。

 巣立ってからまだ間もないチビなのだろう。

 すかさずポッケのコンデジを取り出し、とりあえず撮ってみた。

 ん?誰だっけこの鳥?

 クチバシの端が黄色いから幼鳥であることは間違いないけど、ウグイスにしては緑すぎるし、他に該当者らしき鳥に思い当たらない…

 …と首を捻っているところへ、心配顔の親らしき鳥がそのすぐ近くに舞い降りた。

 あ、メジロだ!

 幼鳥はメジロベビーだったのか。

 ビービー鳴いているメジロベビーのところまで親鳥はすぐさま飛び、ベビーになにか言いつけてからその場を去ると、ベビーは慌てて親のあとをついて行った。

 メジロは島でお馴染みの鳥さんながら、幼鳥を観たのは初めてかも。

 というか、メジロのチビって「目白」じゃなかったんだ…。