全長 25cmほど
水納小中学校が現役の頃は、児童生徒数が僅少とはいえ、平日なら学校に毎日ヒトがいた。
ところが休校になって以来というもの、教室や体育館はもちろんのこと、グランドもヒトッコヒトリーヌが常態になっている。
そのままだとあっという間にグランドは藪に覆われてしまうところながら、教育委員会の予算で維持管理を委嘱されている方が定期的に草刈りをしてくれているおかげで、グランドは手入れが行き届いた平坦地の状態で維持されている。
小さな学校の小さなグランドとはいっても、平坦な草地を好む鳥さんたちにとっては格好のフィールドだ。
とりわけ秋から春の冬鳥の季節には、様々な鳥さんたちをグランド上で目にするようになった。
そのひとつがこのムクドリだ。
平坦な草地だけにムクドリサイズだとよく目立つものの、当初はムクドリとは気づかなかった。
ムクドリなんていったら、本土の方には身近な鳥で、近年は特に都会にお住いの方が街中でフン害に悩まされているほどにお馴染みの鳥さんだし、かつて土佐を旅した際も、暮れなずむ街の光と影の中、電線でムクドリたちが大集団になっていたっけ。
水納島でもGW頃にムクドリらしき大集団が上空を通過していく様子を何度か目にしたことはあったけど、1羽だけとはいえこのように「島に滞在」しているのを目にするのは初めてのこと…
…と思いきや、過去に撮ったヘナチョコ写真を見ていたら、その2年前には枯死モクマオウの梢の先に止まっているところを撮っていた。
ということは、ワタシどもが気づいていなかっただけで、ムクドリは以前からちょくちょく島に立ち寄っていたのかもしれない。
今年(2023年)もまた、前年と同じ3月末に再び小中学校のグランド付近に姿を見せていた。
最初はグランド脇の道路上にある電線に止まっていたのだけど、ワタシがそれと気づかないまま近寄ったために、サッと羽ばたいて校舎の屋上のフェンスに。
校舎屋上からなら見晴らしがいいのだろう、やたらとキョロキョロしてあたりを見回していた彼は、なんだか人待ち顔のようにも見えた。
でも待てど暮らせどお目当ての相手が来なかったからか、しばらくここに佇んでいたあと、やがて飛び去って行った。
その少しあとに、遥か上空を集団で通過していくムクドリサイズの鳥さんたちが。
さては渡りの途中の羽休めの場所をサーチする先遣隊だったのだろうか。
それとも、昨年水納島に立ち寄った同僚(?)から「いいとこだったよ」なんて話を聞いた1羽が、束の間群れを離れてフラリと訪れてみたのだろうか。
その2日後に、我が家の庭から見える電線の上に、ムクドリが2羽止まっていた。
さほど親しいわけではなさげな距離をおいてはいるけれど、複数でいるムクドリを水納島で目にするのは初めてのこと。
このうちのどちらかは、2日前にグランドにいた子なのだろうか?
この電線の直下にあるちょっとした草地をエサ場にしていたらしく、しばらく同じ場所で観ることができたダブルムクドリ。
ちなみに沖縄のムクドリは基本的に冬鳥なんだけど、13年前に刊行された図鑑では、那覇や伊江島で繁殖しているつがいも確認されている(=夏場も県内に留まっている)とある。
今ではつがいの数が増えているのか依然そのままなのか、はたまた絶無になっているのかは不明ながら、水納島では今なおレアバードのムクドリなのである。
※追記という名の訂正
ムクドリをアップし終え、過去に撮ったコムクドリの写真を見ていたところ、ひょっとしてこれはムクドリなのでは?という画像があった。
朝焼けをバックにしているためほとんどシルエットでしかなく、その後同じように電線に止まっているコムクドリ集団に会ったものだから、それ以前にもコムクドリ集団が来ていたのか…と納得して「コムクドリ」認定していた。
ところが画像を無理矢理拡大して1羽1羽をよくよく観てみると、どうもムクドリっぽい。
これは2015年11月のことで、もしこれがムクドリなら水納島での初遭遇は5年ほど遡ることになるし、ファーストコンタクトから複数どころか集団だったことになる。
となると本文中のあらゆるところを訂正しなければならないわけだけど、今さら面倒なので「追記」という形でお茶を濁すのであった。
※追記(2023年11月)
コムクドリの稿の「追記」で紹介しているように、コムクドリの群れと5年ぶりに再会した。
その翌日のこと。
再び早朝に、家の前の電線にイソヒヨドリ大の鳥さんたちが止まった。
画面に入りきらないところにもう1羽、合計6羽のこの鳥さんたちは、全員ムクドリだ。
前日にコムクドリと混成集団になっていたグループだろうか。
先に述べているように、集団でいるムクドリを過去に撮ったことはあったものの、その際はそれがムクドリであるなどとは思わずに撮っていたから、ムクドリと認識しながら撮ったという意味では水納島でのムクドリ最多記録更新だ。
冬の間ずっと居続けてくれればいいのに…とは思うものの、同じくこの日サシバも渡って来て、上空でゴキゲンな声を披露していた。
群れ飛ぶ習性のムクドリとしては、サシバが居座っている小さな島で暮らすなんてのは自殺行為かもしれない。
ムクドリたちが毎年短期間だけの羽休めで終わるのは、おそらくそういう理由なのだろう。