全長 30cmほど
日本とは無縁な場所ながら台風が同時に4つも発生するなど、冴えないお天気が多いこの11月(2024年)、ガメ公のエサ採りのためにテケテケ歩いていたところ、手製ヘリポートの草地に見慣れぬ鳥さんの姿があった。
なんともエキゾチックなその色形は、どう見ても初見とわかる存在感。
そろそろ冬鳥が渡ってくる季節だから、念のためにポッケに入れておいたコンデジが役に立った。
パシャ。
キジバトほどの大きさで、足が長い分スマートに見える。
光を浴びると光沢カラーになる美しい羽の色合いや顔の模様もさることながら、なんといっても特徴的なのは、オカメインコのような冠羽。
上の写真だと背景が邪魔で見づらいけれど、きれいに草刈りがなされたところにいる姿を見ると…
…とっても目立つ冠羽。
オカメインコみたいにこれをプワーッと前方に立たせるわけではなく、どうやらこういう髪型(?)のようだ。
前から見ると、お腹の白い色も随分目立つ。
このお腹の白い部分の羽はフワフワしているのか、風に当たるとポワッ…と膨らんだりもしていた。
カメのエサ採りそっちのけで遠目にその姿を追っていたところ、このエキセントリックバードは広く開けた草原をエサ場にしているようで、ワタシの姿を気にしつつトコトコトコトコ歩いて離れてはいっても、飛び去ってしまうことはなかった。
これだったら、エサ採りを終えたあとオタマサにも見てもらえるかも。
家に戻ってさっそく写真を見せたところ、「タゲリだ!」とすぐさま見当がついたオタマサ。
普段新聞のローカル記事欄で、どこそこにタゲリが飛来…なんていうニュースをちょくちょく見ているからにほかならない。
オタマサを連れて再び手製ヘリポートに戻ってみると、案の定そのままエサを探していたタゲリ。
金武町の田んぼあたりに飛来してニュースになるたびに、「観たい観たい!」と駄々をこねていたオタマサながら、現地を訪ねてみてもこれまで一度として目にしたことはなかった。
そんなタゲリが、水納島に初飛来!
夕刻になってもまだ同じ場所に居てくれて…
…のんびり羽を伸ばしていた。
後刻調べてみたところ、羽の裏は白黒ツートンカラーになっているらしく、飛んでいるときはやわらかなお腹の羽毛がフワフワしているように見えるそうな。
その様子も是非観てみたいところながら、飛んで逃げてしまったらそれっきりになりそうだから、ヤシの木の陰から市原悦子のように眺めるだけに留めた。
タゲリは沖縄県内には毎冬少数が渡ってくるそうで、場所によっては小集団を作っているらしい。
本土でも積雪がない地方では冬場に観られ、「冬の貴婦人」と呼ばれるほどにもてはやされているという。
どうやらこの方面の変態社会では、タゲリの名はかなり知られているようだ。
でも少なくとも我々はこの30年間で目にした覚えはなく、個人的水納島初記録種がまた新たに加わった。
翌日再び同じ場所に来てみたところ、タゲリはほぼ同じ場所にいた。
ところがそこへ、カラスが1羽やってきた。
ドクターヘリ用に用意されてある手製ヘリポートの丁寧に刈り取られた芝ゾーンスクエアにいるものだから、上空からタゲリがよく見えるのだろう、「ん?」と興味をもったらしいカラスは、舞い降りる勢いでタゲリに接近してきた。
するとタゲリは、すぐさま飛び立った!
おお、羽の裏のツートンカラーがバッチリ。
そして飛び去りつつ、
「ミャー…」
という、子猫のような鳴き声を披露してくれたタゲリ。
ウワサには聞く「ネコのような声」を、初めて実際に耳にすることができたのだった。
とはいえ飛び去ってしまったら、もうこのままGoneなのだろうか…
…と思いきや、島上空を短い半径でグルリとUターンしてきたタゲリは、すぐさま手製ヘリポートに戻ってきた。
よっぽどお気に入りの場所らしい…。
ヤツガシラと同じような動きで繰り返し地面をつついているのだけど、いったい何を食べているのだろう?
すると、いきなり大物をゲットした冬の貴婦人。
タゲリのお食事。
(2分のYouTube動画)
獲物はカナブン系の幼虫のイモムシのようだ。
ご存知のようにこのテのイモムシは、身を守るために体を丸めて筋肉(?)をギュッと固くするから、さすがにひと呑みというわけにはいかないらしい。
そのため時間をかけてイモムシの「ギュッ」を解きほぐしつつ、最終的には丸ごとゴックン。
貴婦人らしからぬ大胆な食事の仕方を披露してくれたタゲリ、栄養満点の御馳走にご満悦のようだった。
その日のお昼にも散歩ついでに手製ヘリポートに寄ってみると、相変わらずエサ探しをしていた。
この様子なら、もうしばらく居てくれるかな?
たしかにその後数日間は居続けてくれたんだけど、あいにく月の半ばに沖縄本島地方はとてつもない大雨に見舞われてしまい、そのせいだろう、タゲリはその後すっかり姿を消してしまった。
今回初めて水納島を訪れた貴婦人(貴公子かもしれない)は、
「お?この島なかなかいいじゃん…」
と思ってくれていたかもしれないだけに、常識ハズレも甚だしかった激雨が恨めしい…。