全長 17cmほど
その昔久米島の車えび養殖場でアルバイトをしていた頃、前夕から養殖池に設置してあるエビ籠を早朝から回収し、水揚げしたクルマエビを箱に詰め、午前中のうちに空港まで運んで出荷、というのが日課だった。
その空港まで行く途中の路上に、とんでもない数のツバメがたむろしていたので驚いた。
4月のことである。
職員の方に伺ったところ、ちょうど渡りの季節になるこの時期に、毎年ツバメの大群が久米島に現れるのだそうな。
ツバメは渡り鳥なのだ。
ただし本土では春から秋までずっと観られる夏鳥ながら、冬の間は暖かな東南アジア諸地域で暮らすツバメたちにとって、沖縄はあくまでも渡りの経由地でしかない。
そのため春や秋に大群が束の間滞在することはあっても、基本的に沖縄では長期に渡って観られるわけではない(少数は越冬するらしい)。
小さな水納島にスワローズが立ち寄る理由などまず見当たらないから、水納島ではリュウキュウツバメよりも遥かにレアなツバメ。
ところが2020年3月末、我が目を疑う光景が。
そのうちの1羽を無理矢理アップ。
胸に目立つオレンジ色が無いところからして、スワローズことザ・ツバメ軍団だろう。
それ以前の記憶はすっかり霧の彼方になっているものの、水納島でちゃんと「ザ・ツバメ」と認識したのはこの時が初めてかもしれない。
なるほどなぁ、小さな島にも立ち寄ることがあるのだなぁ、ツバメ…。
その2年後、5月というのに激時化で朝からえらいことになっていた日のこと。
時ならぬ激嵐に遭って緊急避難してきたのだろうか、ツバメっぽく見える鳥さんたちが朝から島内をにぎやかに飛び回っていた。
早朝に桟橋まで海の様子を見に行った際、葉っぱが風に吹き飛ばされているのかと思ったその影は、白新高校不知火投手の超速球のごとく、地を這うような低空飛行からホップし、高速で飛び去って行った。
そのスピード、フォルムは、どう見てもツバメの仲間だ。
でも背側はブルーに見える。
はて、青いツバメなんていたっけか?
この日そのブルースワローズは島内狭しと飛び回っていて、地表付近に集まっている羽虫でもゲットしているのか、ずっと超高速低空飛行をしていた。
午後に雨が上がり、夕刻になると、いつの間にかナゾのツバメたちの狩場が我が家のすぐそばになっていた。
照度が低い曇り空の夕刻に、超高速飛行中のツバメを静止画像で捉えられるほどの高性能マシンはないものの、なんとかジョニ黒(コンデジ)で種類確認用に写真を…とがんばってみた。
エサを求めてなのかお祭り騒ぎなんだか、とにかく狂乱状態で飛び交うツバメたちがどれほど高速か、まさに一見に如かず、↓こちらを是非。
越春ツバメ。
(1分のYouTube動画)
これを低照度のなかコンデジで静止画像で捉えるだなんて、ニュータイプの覚醒無くしてはとてもじゃないけどなしえない。
そこで、ジョニ黒の撮影モードにあるスポーツ競技など高速で動くものを撮るための連写機能を用い、とにかくどれか1枚くらい…と数撃ちゃ当たる方式でカシャカシャカシャカシャ…と撮っていたら、なんてことだ、気がつくと1000枚近く撮っていた…。
そのうちかろうじて正体がわかるように撮れていたのは、冒頭の写真を含めてたった数枚。
お腹側の別カット。
正面。
そして背側。
↑この画像はちょっと色味を強調しているのだけど、肉眼の印象はホントにこんな感じで、光沢感のあるブルーに見えるのだ。
お腹側の模様もカッコイイこのツバメSP、いったい何ツバメなんだろう?
きっと珍しい種類に違いない、と思いながら調べてみたら…
あれ?
これって、ザ・ツバメじゃないか。
ツバメって、黒と白、そしてほんのり赤味が顔あたりに…という色じゃなかったっけ?
ヤクルトスワローズのつば九郎だって黒と白とほっぺの赤だけで、青といえばヘルメットと胸の球団名だけなのに…。
しかし図鑑的解説によると、ツバメの体色、それも背側については
「頭と背面は光沢のある藍黒色を呈する」
と述べられている。
こんなに青味が感じられる色合いだとは知らんかったなぁ…。
知らなかったといえば、お腹側の色の配分も、尾羽の鮮明な白い模様もまったく知らなかった。
色柄だけじゃなく、飛翔している姿をマジマジと見たのも初めてだ。
超高速で飛び交っているツバメたちは、ワタシの目の前あたりで交差、もしくはUターンしていて、Uターンする際に仲間とタイミングが重なると、「ピチュ、チュチュ…」といったかわいらしい声で鳴き交わしていた。
「~♪ ヒュルリ~ヒュルリララ~…」
という感じではなかったのは、冬ではなくて春だからだろうか。
時ならぬ激嵐でさんざんだった1日に、激嵐だったからこそであろう思わぬプレゼント。
海神様、ありがとうございます。