体長 15mm
アカスジカクレエビは、水納島に客として遊びに来ていた頃に初めて出会ったエビだ。
当時はなんであれ「初めて」率が高かったものの、初遭遇に心ときめきながらパシパシ撮った。
その後日常的に水納島で潜るようになると、このエビはそれほど珍しい存在というわけではないことがわかった。
なにしろ場所によっては、ウジャウジャとひしめき合っていることもあるほどなのだ。
イソバナやヤギ類など美しい刺胞動物についていることが多く、ほとんど透明だから目立たないようでいながら、ひしめき合うほどにウジャウジャいることが多かったから見つけるのはたやすい。
たくさんいるのだから写真を撮るのも簡単…と思いきや、そうは問屋が卸さない。
透明だから背景に溶け込みすぎて、↓このように肝心のエビがどこにいるかわからない写真になってしまうのである。
2匹いるの、わかります??
撮るのは難しくともよく見かけるので、目にするたびに撮っていたからわりと写真を残しているのだけれど、刺胞動物についていることがもっぱらのアカスジカクレエビの場合、↓このようにウミシダについているのはけっこうレアケースのようだ。
また、透明な体に赤いスジ模様だから赤いイソバナにいるとまったく目立たないけれど、黄色いヤギに乗っているとそれなりにフォトジェニック。
私が初めてこのエビと出会った頃くらい昔なら、このテのエビといえばアカスジカクレエビしか図鑑に載っていなかったらよかったものの、次から次へと未知のカクレエビが湧き出てくる現在では、ちょっとした差異が気になるところ。
でもアカスジカクレエビの場合は、水戸黄門の印籠に等しいアカスジカクレエビ印がある。
それは、腰(?)のところにある、白が寄り添っている赤い点だ。
このマークさえ確認できれば、エビがウミシダに乗っていようとカイメンに乗っていようと多少模様が違っていようと、アカスジカクレエビ認定して間違いなし。
マーク問題も気になるところながら、アカスジカクレエビの意外なナゾにハサミ脚問題がある。
透明な体に透明なハサミ脚だから目立たないこと甚だしいのだけれど、アカスジカクレエビにはちゃんとハサミ脚がある。
でもそもそも目立たないのだから、ハサミ脚はせいぜい申し訳程度なのだろう……と思いきや。
実はアカスジカクレエビは、意表をついて長いハサミ脚を持っているのだ。
この長いハサミ脚はオスメス同様で、卵を抱えている(ように見える)ものも長~いハサミ脚(矢印の先がハサミ部分)。
意表をついて長いものだから、ハサミ脚の途中が物陰に隠れているこの写真……
…を見ただんなは、「まるでジオングのサイコミュシステムだ…」と意味不明のつぶやきをもらしていた。
ハサミ脚をダラリと垂らせば、トサカの幹を抱えられそうなほどに長い。
ところがなんとも面白いことに、この長~いハサミ脚は、なぜだか片方だけなのだ。
長いハサミ脚を持っているアカスジカクレエビの写真はどれも片方だけだし、かろうじて2匹のハサミ脚が写っているものを見ても…
後ろのエビは額角だけしか写っていないし、左右の違いはあれど、どちらも長いハサミ脚は片方だけ。
ウジャウジャいるからいつもケンカしてばかりいるためにハサミが片方になっているものばかり…というわけではないのだとすると、これはアカスジカクレエビの大きな特徴のような気がするんだけど、そのような記述を図鑑で目にしたことが無い。
ずっと昔から知っているつもりでいたのに、これはいったいどういうことなんだろう?
…というナゾを抱えていたところ、さすが私、冒頭の写真の存在にようやく気がついた。
ハサミの部分の朱色に染まっている範囲の大小はあれど、左右どっちも長いじゃん、ハサミ脚!
…ってことは、片方しかないものが多いのは、ウジャウジャいすぎるために同種同士の争いが絶えないから、ってことなんだろうか?
よく見ると冒頭の写真も右側のハサミはやや短いような気も…。
昔のようにウジャウジャいてくれることが少なくなっているために、ナゾの解決には時間がかかりそうだ…。