甲長 30mm
ここまで紹介してきたサンゴヤドカリの仲間たちはどれも小型で、繊細な容姿(?)をしているものばかりだったけれど、ヤドカリ属のヤドカリさんたちはそのイメージとは程遠い。
アオボシヤドカリもまたヤドカリ属の種類で、体が大きめだけに宿に利用している貝殻もでっかく、海中で出会うといつもデンッ…としている。
リーフの上やリーフ内といった場所がお気に入りのため、ボートダイビングではあまり見かけないけれど、リーフ上でスノーケリングをしていると出会う機会は多いアオボシヤドカリ。
外に出しているすべての手脚の肘、膝のあたり(腕節)に、その名のとおり青い星マークがあるからわかりやすい。
ただ、青い模様はそれなりに美しいものの、ヤドカリ属のヤドカリさんたちは剛毛揃いで、アオボシヤドカリも同様だ。
でっかくて剛毛となると、チマチマしたものを可憐に美しく撮る世のマクロ撮影派ダイバーのみなさんの注目を集めることはなく、サンゴヤドカリの仲間たちなら世の中に星の数ほどある「美しい写真」を、アオボシヤドカリで目にする機会はほとんどない。
一方でアオボシヤドカリは、別方面で注目を集める機会が多い。
というのも、彼らは「どうして?なぜ?」と思わず本人に訊ねたくなるくらい、移動の際には邪魔になりそうな突起だらけの貝殻にわざわざ住んでいて、それらの貝殻は、貝殻コレクターさんたちに人気がある種類でもある。
↑これなどはまだ突起部分が摩耗しているからさほどではないけれど、まだ原形を保っているスイジガイやクモガイなどを宿にしているものもおり、貝殻コレクターさんたちがスノーケリングをしている際に、「おっ!」とばかりに貝殻を拾うと…
アオボシヤドカリでやんす…ということが往々にしてあるのだ。
そういう場合でも心ある方ならもちろんそっと元に戻してあげるから、ヤドカリたちは「??」だけで済む。
ところが、なかにはオノレの趣味嗜好のためにはヤドカリの生命など毛ほどの重さも感じないヤカラもいて、そのまま持ち帰り、ヤドカリが死んでから貝殻だけゲットしてしまう。
ヤドカリも法律もただ沈黙を守るだけとはいえ、間違いなくオテントサマは観ている、ということをヤカラの方々はいまだ知らずにいるのだ。
宿にしている貝殻のせいでそんな被害に遭うというのに、スイジガイを家にしているアオボシヤドカリは、宿替えの貝殻も引き続きスイジガイを物色していた。
物件を確かめるその目は真剣そのものだ。
このように大きくてわかりやすい形の貝殻を利用しているものだから、たとえボートダイビングでは遭遇頻度は低くとも、いれば見つけるのはたやすい。
それも、このテの貝がいるはずがないところにいたりすると、遠めからでもすぐにわかる。
ただし、大きいヤドカリとはいえダイバーのような巨大生物相手だと警戒するから、ウカツに近寄るとすぐに貝殻の中に引っ込んでしまい、そこにあるのは苔むした貝殻だけ…ってことになる。
アオボシヤドカリの青い星を観るためには、そぉ…っと近づくか、一度引っ込んだあと、出てくるのを気長に待つしかない。
このアオボシヤドカリのために、そこまでするヒトを、私はこれまで観たことがない…。