甲長 10mm
ヤドカリさんたちはみな、「〇〇ヤドカリ」という具合に、和名の末尾は「ヤドカリ」で終了している…
…と思い込んでいたところへ、まさかの「ヨコバサミ」エンド。
この「ヨコバサミ」エンド和名のヤドカリさんたちには、ヨコバサミ属、ヒメヨコバサミ属、ミギキキヨコバサミ属などのグループがあるのだけど、それぞれが分類的に近似かどうかに関係なく、当コーナーでは「ヨコバサミ」つながりでひとまとめにしてしまう。
で、その「ヨコバサミ」ってそもそもなんね?
由来を調べてみたところ、他のヤドカリさんたちはハサミ脚が前後に開くのに対し、ヨコバサミの仲間たちは左右に開くところからこの名があるそうな。
でも…他のヤドカリさんをつらつら観ても、左右に開くような気がするんですけど?
どうやらこれは、貝殻からヒョコッと顔を出している様子からではわからない違いのようで、全身を貝殻から出した標本状態になって初めてわかるらしい。
ようするにヤドカリさんたちの多くは標本状態でハサミ脚を素直に伸ばすと縦になるところ、ヨコバサミの仲間たちは横になる、すなわち解剖学的に左右にハサミが開く、ということのようだ。
でも海中では標本を見るわけではないから、貝殻から手脚を出している姿でそれを確かめるのはキビシイ。
つまり、図鑑でも観たことがないものを海中でパッと見て、「これはヨコバサミね…」とすぐにわかる特徴というわけではなさそうだ。
その点このダンダラヒメヨコバサミは、見目麗しい姿のおかげで一目瞭然。
貝殻から出てくるところなど、まるで微笑んでいるかのようで可愛いったらない。
暗がりが好きらしく、リーフ際の半トンネルやオーバーハングの陰になっている岩肌あたりをサーチすると会えるのだけど、あいにくその頻度は年に1度くらいでしかない(入念にサーチしたことはない)。
オーバーハングの岩陰だから、↓こうなっていることもある。
サンゴ礁の暗がりの岩肌は、石灰藻やらなにやら様々な付着生物がついているために、光を当てるとけっこう派手な色をしている。
そのためダンダラヒメヨコバサミのカラフルな手脚は、カモフラージュ効果抜群。
光を当てなきゃ当てないで暗いから見えづらい、当ててもカモフラージュ効果で気づけない…となるとうっかり八兵衛にはつらい。
でも光が当たらないところで暮らし続けているからだろう、彼らが宿にしている貝殻には藻その他の余計な付着生物がさほどついておらず、漂白されて白に近いものであることが多い。
であれば、たとえ暗がりでもカモフラージュしていても、まず白い貝殻を見つければいい…
…からといって、白い貝殻=ダンダラヒメヨコバサミではないし、なかにはこういう貝殻に入っていることもある。
この貝殻にはわりと付着生物が多い…。
ということはつまり、白い貝殻を宿にしてくれているから私が見つけているだけであって、他にもっと多くの白くない貝殻を利用しているダンダラヒメヨコバサミがいるってことかも。
でもやはり紅白模様のダンダラヒメヨコバサミは、白い貝殻でいっそう美しさが引き立つ。
もちろん、個人の感想です。