体長 6mm
「エビジャコ」という呼称は古くからあり、当コーナーでたびたび取り上げる90年代の雄、「沖縄海中生物図鑑・甲殻類編」(新星図書出版刊)にもその名が載っている。
名前の歴史が古いのはいいけれど、エビなんだかシャコなんだか、エビジャコっていったらシャコってことになっちゃうじゃん…
…と思いきや。
なんとエビジャコの「ジャコ」とは語呂でシャコがジャコになったのではなくて、「ザコ」、すなわち雑魚が転訛しての「ジャコ」なのだという。
それこそチリメンジャコに紛れ込むチリモンなみの小さなサイズだから、まさに「ジャコ」。
マックスサイズでさえ1cmに届くかどうかというくらいのこのエビは、白い砂底を生活の場にしている。
しかも日中はたいてい砂中に潜んでいるというから、茫漠たる砂底でこのエビを見つけるなんてことに比べれば、おそらく干し草の中から針を探し出すほうがよほど簡単に違いない。
恥ずかしながら私は、このエビを「探し出し」たことはなく、これまでの何度かの出会いはすべて偶然のたまもの。
ただしその偶然は、砂底をつぶさに執拗に入念にチェックしていればこそ、とはいえる。
初めて出会ったのは2000年前後のことで、不思議的クリーチャーがいはせぬか…と砂底を徘徊していたおかげで気づくことができた。
フィルム写真だった当時のこと、真っ白な砂地にいる白いエビを撮って、ひと月以上経ってようやく現像されたものを見れば全部真っ白…という悲劇は避けたかったから、念のために手の上に載せて撮ったのがこれ。
先に上げた図鑑に「エビジャコの1種」として掲載されている写真とは似ていないと思ったからか、それとも当時すでにその図鑑の内容を忘れていたからなのか、撮ったはいいけどまったく謎のエビ状態だった。
その後このテの「ジャコ」の研究も進んだようで、図鑑を見るとイノーエビジャコという和名がつけられているものがいるほか、それとは別種とされるものもいくつか紹介されている。
彼らはシンカイエビジャコ属のエビだそうで、探せばまだまだ「新種」が出てくる世界なのかもしれない。
けれど、あえて力強く言わせてもらうと、これらのエビを見分けるスベが私にあろうはずがない。
さらに開き直って言わせてもらえば、冒頭の写真と手のひらの上のエビが同じ種類か別種なのかすらわからない。
わからない勢いで、これまでに記録に残しているシンカイエビジャコ属系エビジャコを見てみよう。
これらが同じ種類か別の種類かなんて、こんな小さな写真じゃなくPC画面いっぱいで見てもさっぱりわからないときたもんだ。
ちなみに冒頭の写真も含め、どれもリーフの外の水深10m~25mの砂底で撮ったものだから、「イノーエビジャコ」という名が語る環境ではない。
こうして見てみると冒頭の写真のエビの頭部の色味が他とまったく異なるのもきになるところながら、手のひらの上で撮ったエビのたたずまいが、なんとなく他とは様子が異なるような気もする。
ところで、すぐ上の最後の写真はだんなが撮ったもので、珍しくこんな小さなものが見えたのか…と思ったら、実は違うモノを撮っていたのだった。
ゴイシガニの仲間と思われるカニが砂に潜る様子を撮っていたそうで、後刻PC画面で写真を見て初めてエビジャコの存在(矢印の先)に気がついたらしい。
ことほどさようにエビジャコは、そのような偶然でもないことにはなかなか出会えない、小さな小さなエビなのである。
どうしても見つけたい、という方は、まずは干し草のなかから針を探す練習から始めてください。
※場所によっては、砂底にたくさんエビジャコ系がいる…ということもあるようです。