エビカニ倶楽部

エビスヤドカリ属の仲間

(コスゲエビスヤドカリ?)

甲長 3mm(写真の個体)

 エビスヤドカリ属という、なんともめでたい名前がついているヤドカリさんのグループがある。

 このグループのみなさんも随分分類学的研究が進んでいるようで、それぞれに立派な名前がついている。

 ただし環境が異なると色味が変わってくるからか、色味的にビンゴ!の画像になかなか巡り会えないため、そもそもエビスヤドカリ属なのかという時点でまったく自信が無い。

 そのなかでもこれはまず間違いなくエビスヤドカリ属でしょう…と思っているのが冒頭の写真。

 基本的に彼らは水深20m前後の砂底で暮らしているから、水納島のような白い砂底だと体も手脚も随分白っぽく、色味的には冒頭の写真のように顔周辺に赤味が少々あったり、まったく無かったりする。

 両者が同じ種類なのかどうかは(私の能力的に)まったく不明ながら、両者とも、右側のハサミ脚が太くないという特徴がある。

 ホンヤドカリ科のヤドカリさんなので、ハサミ脚の左右に大小差がある場合は右側が大きくなるのはこのヤドカリも同じ。

 けれど左のハサミ脚に比べると、長さにはかなり違いはあっても、太さに極端な違いがない。

 ↑これは左のハサミ脚を使って何かを食べているところで、右のハサミ脚とさほど太さが変わらない。

 また、その脚などをよく観ると、ただ白いだけかと思いきや実は半透明で、その表面に白いラメ様の模様が散りばめられているなかなかのオシャレぶり。

 拡大。

 よく観ればけっこう美しいエビス一族。

 しかしながら、これがまた小さく、共生ハゼを観察するためにジッとしているときに傍らにいた的偶然か、もしくは砂底グリッドサーチでもしていないかぎり、出会う機会はまずない。

 貝殻が色付きのものであればなんとかなる…と言いたいところながら、彼らは砂底に潜り込んでいたりもするのだ。

 体に赤味が入っているものも、同じように砂中に没している。

 たとえ砂から出てきても…

 貝殻が砂だらけ。

 これで貝殻が5cmくらいあればまだしも、貝殻でさえ1cmに満たないのだもの、見つけろと言われましても…といったところだ。

 にもかかわらずこれまでわりとコンスタントに出会えているのは、変態的砂底グリッドサーチのおかげといっていい。

 具体的にアテがあるわけでもなく、一望砂の海底を格子状に何度も行き来するグリッドサーチ、けっしてヒトに勧めるものではないけれど、私の場合これのおかげで出会えている魅惑的クリーチャーの数は枚挙にいとまがないほど。

 こうして出会いを重ねているエビス一族、その種類の見当がまったくつかないわけではなくて、ひょっとして…レベルで該当者がいるエビス一族もいる。

 そのひとつが↓これ。

ウルマエビスヤドカリ

 前から見るとこんな感じ。

ウルマエビスヤドカリ

 図鑑やネット上で目にする画像とは色味の趣きはいささか異なるのだけれど、第1触角とか…

 太もも(?)の付け根あたりの模様などが…

 「ウルマエビスヤドカリ」とけっこう似ていると思うのだけど、どうだろう?

 限りなく根拠が薄いという意味では同じくらいいいかげんな同定ながら、冒頭からずっと紹介している赤味のあるエビスさんたちにも、「ひょっとして」な該当者はいる。

コスゲエビスヤドカリ

 その名もコスゲエビスヤドカリ!

 学名にも Catapagurus kosugei と献名されているコスゲ氏は、もちろんのこと巨匠コスゲさんとはなんの関係もない。

 とはいえ「コスゲエビス」だなんてステキな名前のヤドカリさんがいるとなれば、巨匠が放っておくはずはない。

 女子ウケするステキな作品をものする巨匠が、こんな変態的ヤドカリにカメラを向ける機会はほとんどないだろうけど、ここはひとつ砂底グリッドサーチを…。

 あ、せっかく出会えても、実はコスゲエビスヤドカリじゃなかった、なんてオチがあったらゴメンナサイ。