体長 5cm
まだダイビングを始めて間もない学生の頃、ナイトダイビングの時にふと我に返ってしまうと、あたりに自分のライトの光しかなかったら、記憶の底に沈めておいたコワイコワイ話が静かに浮上してきたものだった。
そんなときに岩肌を見ると、時折キラッと光る無数の眼……。
ヒェ~~~~~~ッ!!
…と昔はコワい思いをしたものだったけれど、写真を撮り始めるようになって、その光る眼の正体はほとんどの場合サラサエビの仲間であることがわかってきた。
幽霊の正体見たり枯れ尾花、正体がわかればどれほどたくさんの目がキラリと光ろうとも、怖くもなんともなくなる。
そのキラリと光る目のひとつが、このエンヤサラサエビだ。
洞窟など昼なお暗い環境なら日中でも外に出ているそうだけど、日の当たるところには出てこないから、水納島ではまず日中に出会うことはない。
なので出会いはナイトダイビング限定ということになる。
ただし彼らは光を嫌うため、せっかくその姿を見つけても、しばらくライトを当て続けているとどんどん岩のくぼみに逃げ込んでしまう。
そのためライトは直接当てず、周辺部のやや薄暗い光で確認しながら、エイヤッと撮ってしまわないといけない。
なるほど、だからエイヤサラサエビなのか…。
< エンヤです。
幸いなことに比較的個体数は多く、失敗して引っ込まれてもすぐさま別の個体に移ることができるので、何度も何度もチャレンジできる。
そうやってまるでモグラたたきのように頑張っていると、エンヤサラサエビたちには鋏脚の長いものとそうでないものがいることがわかってきた。
これはサラサエビの仲間によく観られる特徴で、オスだけ第1胸脚がビヨ~ンと長く伸びるため。
ちなみにすぐ上の写真のエビは片腕だけながら、本来は2本揃って長く伸びる。
今でこそ当たり前のように知られているこの話も昔は周知のジジツではまったくなく、それどころか腕が長くなっているオスには別の名前が付けられていたというケースもあるほど。
私がナイトダイビングに精を出していた前世紀末にはまだ広くあまねく知られるには至っておらず、かくいう私も「腕が長くてカッコイイ」ってことで、エンヤサラサエビの写真はオスしかない…。
いずれにせよこれらはすべてフィルムで撮っていた頃の写真なので、デジイチでいくらでもパシャパシャ写せる今、メスとともにオスもあらためて写真を撮りたいところだ。
そのためには、夜の夜中に潜らなければならない。
となると夕方に酒が飲めない。
ツライ…。