体長 15mm
沖縄でなかなか味わえない秋の味覚のひとつに、栗がある。
子供の頃は毎年実家の庭で栗が生ったおかげで、秋になると栗ご飯を飽きるほど食べることができたものだった(けっして飽きなかったけど)。
果実の収穫をレジャー化したものには、みかん狩りやイチゴ狩り、そしてブドウ狩り、リンゴ狩りなどいろいろあるけれど、栗拾いだけは少し様子が違う。
まず拾う際に注意しないと、イガで足やら手やらを刺してしまい、ギャッと飛び上がるはめになるから…。
そのうえそんなに苦労してもけっしてその場で食べることはできず、煮るなり焼くなり蒸すなりしなければならないのだから、いくら昔の田舎のわんぱく小僧でも、栗泥棒はしなかったことだろう。
天津甘栗でさえ最初から剥かれたものが売られている今の世の中のこと、栗といえばそれしか知らない子供たちは、はたしてイガグリからどうやって栗を取り出そうとするだろう?ちょっと見てみたい気もする。
子供の頃に何度もイガグリで痛い思いをしたことがある私なので、ガンガゼに住む生き物を観察する際にはいつも栗拾いを思い出す。
ガンガゼは細く長い棘が密集しているウニで、小さな生き物にとって棘の合間は格好の隠れ家になるのだ。
棘のバリアーのおかげで、外からいくらその姿が見えようとも、外敵はそうおいそれとは手出しができない。
ガンガゼカクレエビも、ガンガゼやガンガゼモドキの棘の合間を隠れ家にしている生き物のひとつ。
おまけにこのガンガゼカクレエビなんて、ガンガゼの棘から棘へヒョイヒョイ渡り歩くので、ファインダー越しに眺めながらついうっかり追いかけすぎると、容赦なくガンガゼの棘がチクリと刺さる。
実は毒は無いと言われるようにもなっているガンガゼではあるけれど、何がどう作用するのか、刺さり具合によっては腫れたりすることもあるくらいで、毒の有無はともかく細い棘が連発で刺さるととにかく痛い。
水納島でも昔はリーフの内でも外でも日中からフツーにガンガゼが観られたというのに、ここ10年ちょいくらいの間に(2022年現在)どういうわけか激減してしまったため、棘の合間に暮らす生き物どころかガンガゼ自体になかなか会えないようになっている。
なのでガンガゼカクレエビともとんとご無沙汰している私ながら、前世紀にビーチでナイトダイビングをした際に、(おそらく)ガンガゼモドキの棘の合間で、観たことが無い色味のエビを見つけたことがある。
長らく正体不明だったのだけど、その後世に登場してくれたエビカニの図鑑で、ガンガゼカクレエビは夜になると赤っぽくなることを知った。
今やネット上でも赤いガンガゼカクレエビの写真が観られるくらいだから、この写真は夜のガンガゼカクレエビってことで間違いないだろう……
…と納得していたら、さらに新しい図鑑にはザンジバルウニヤドリエビなるオレンジ色のニューフェイスが掲載されていた。
体形や雰囲気的にもなんとなくそちらのほうに近いような気がするものの、いかんせん画面の中に小さく写っているピンボケ&肝心のハサミ脚が写っていない↑このポジフィルム1枚しかないため、判別不能だ。
もうひとつナゾの写真があった。
ガンガゼカクレエビとは思えないフォルム、かといってガンガゼエビとも思えないその色彩。
そもそもガンガゼカクレエビ自体を目にする機会が減っている今、その正体が明らかになる日がはたして来るだろうか…。