甲長 5mm
オメカシヒナヤドカリとよく似た眼をしているハネトビネジレヤドカリ。
分類的にはまったくかけ離れているのだろうから、観るヒトが見ればひと目ですぐに両者を区別できるのだろう。
けれど我々シロウト目には、眼だけ見るとオメカシヒナヤドカリとそっくりに見える。
でも第1触角を観ると…
全然異なるカラーリング。
眼に赤い点々がたくさんあって、第1触角がこういう色だったら、ハネトビ君ってことで間違いないはず。
ただし写真の個体は宿にしている貝殻自体が1cmにも満たないくらい小さく、おそらく他のオトナサイズもだいたいそのくらいだろうから、ファインダー越しでさえそのカラーリングに気づけるものではない。
わかりやすい模様ではあるけれど、撮った画像を後刻PCモニターで見て、初めて模様を知ることになる。
どんなに模様がわかりやすくとも、昔なら結局ホンヤドカリ科の1種くらいまでで探求は終わっていたはず。
それが今や和名までついているのだから、時代は変わった。
ちなみにこのハネトビネジレヤドカリが Turleania saliens という学名で2008年に新種として報告された記載論文は、当コーナーにたびたびその名が登場するF博士の手によるものなのだけど、和名が彼の手によるものかどうかは不明だ。
「ネジレ」というのは「ネジレヤドカリ属」のヤドカリさんだからついているだけで、この和名の冠単語は「ハネトビ」。
色模様や形態ではなく、「跳ねて飛ぶ」という行動が名に冠されているのは、ヤドカリの和名では珍しい気がする。
種小名の saliens もラテン語で「跳ぶ」という意味なのだそうな。
その名のとおり、けっこうアクティブに砂底上を動き回るというこのヤドカリの記録画像は、当方には1個体分たった3枚しかなく、それもだんなが撮ったもの。
あとにも先にも水納島での記録はこの1個体のみ、ということになるほどとは知る由もないだんなだから、細部までキッチリ写っている写真も撮っておく…なんてことに思いが至るはずもなし。
なので残された画像は、「よく砂の上で見る小さなヤドカリね」くらいにテキトーに撮ったのであろう、テキトーな写りでしかないのだった…。
画像だけを見ると砂底上ではなさそうなのだけど、なにしろ撮った本人の記憶がまったく欠落しているので、そもそもこの場にいたのか、石をめくったら出てきたのか、詳しいことは不明だ。
ネット上で述べられているところによれば、ハネトビ君は危険を感じると後方に飛び跳ねるのだそうで、そのうえ砂中に潜り込むワザも備えているという。
でもわずか3枚の記録写真は1分以内のわずかな時間に撮られたものではあるけれど、その間ハネトビ君はビミョーに動いているだけで、場所はほとんど移動していない。
このあとピンッと跳ねたから3枚しか撮れなかった、ということなのだろうか?
名に冠されるほどの飛び跳ねっぷり、是非実際に観てみたい…。