エビカニ倶楽部

ホモラの仲間

甲幅 20mm

 かつて沖縄のご婦人たちは、頭に大きなザルを乗っけて歩いていた。

 我々が越してきた当時の水納島でも、おばあたちはザルを載せて楽し気に歩いていた。


モデル:民宿大城のおばぁ

 今のように一輪車(ネコ)がホームセンターで安価で売られるようになる以前、ご婦人方が人力で多量の荷物を運ぶ際にはこのうえなく合理的かつ便利な運搬方法だったのだ。

 エビカニの世界にも、なにやら頭上(?)に担いでいるものがいる。

 その昔伊豆の海でよく出会ったミズヒキガニも、ガヤや海草を背負っていたものだった。


90年代前半の西伊豆・大瀬崎にて

 ただ、何かを背負うその一生懸命さはわかるんだけど、まったくカモフラージュ効果はなく、防御手段というわけでもなく、むしろ見つけてくださいって言っているようなものじゃん…と突っ込みたくなったものだった。

 どうせ背負うなら、カイカムリたちのようにカモフラージュに工夫を凝らせばいいのに…。

 カイカムリやミズヒキガニにわりと近い仲間にホモラと呼ばれるグループがあって、彼らもまた何かを背負うタイプのカニたちだ。

 冒頭の写真のカニも、よく観ると何かを背負うために脚が特化しているらしく、一番後ろの短めの歩脚が甲羅側にグッと曲がっている。

 この体つきからして、おそらくホモラの仲間と思われる。

 ナイトダイビングでこのカニと出会った当時の私はまだカイカムリ類と出会っていなかったから、常日頃から是非とも何かを担いでいるカニを撮りたいと常々思っていたところでもあった。

 そんなおりに出会ったホモラ、何かを背負ってくれていればラッキー♪てなところだったのだけど、なんてことだ、せっかく歩脚が背負い脚になっているというのに、このカニ、何も担いでいなかった…。

 ひょっとして、担ぐものをなかなか探せないどんくさい子だったのだろうか。

 それとも、こだわり派で気に入ったものが見つかるまで裸で暮らすのだろうか。

 はたまた、水中ライトの光に驚いてうっかり落っことしてしまったのだろうか。

 そういえばかつての沖縄でザルを頭上に載せているのは女性たちだけだったように、ひょっとしてこのカニたちも背負うのはメスだけ…

 …なわけはないか。