(Pelagopenaeus balboe?)
撮影実長 15mm
一般にプランクトンといえば、小さな生き物をイメージしがちだ。
けれど水中生物をその生活様式で分類する際の用語である「プランクトン」は、「海中を漂って生きているもの」すべてが含まれる。
だから、1mmにも満たない何かの幼生も、直径1mほどのクラゲも、そして何もせずボーッと浮かんでいるだけのダイバーも、すべてプランクトンということになる。
そんなプランクトンのひとつに、ナガヒカリボヤがいる。
ホヤとはいいながらも浮遊生活を送る長さ20cmくらいの筒状の生き物で、水納島では5~6月にときおり見られるものの(※2022年注 近年は滅多に見られなくなっている)、たいていは死んでしまって海底に転がっていることが多い。
ところが、昨年(2011年)2月に出会ったナガヒカリボヤは元気一杯。
それはそれで珍しいので、ホヤとともに私もプランクトン化しつつ、しげしげ眺めてみた。
そのときふと思い立ってホヤを手に取り、筒状の体の中をのぞいてみてびっくり!
中に数個体のエビがいたのだ。
まったく予期せぬ初めて見るエビに、久しぶりの超興奮状態で、さらにに漂いつつ眺め続けた。
じっくり見るためにナガヒカリボヤをつまんでもみたけれど、エビたちはまったく逃げようとはしない。
どうやら
「ナガヒカリボヤについていないとだめなの、ワタシ…」
…なエビのようだ。
宿主への依存度が高いエビは、そこから逃げることがないので、ある意味撮影がしやすい。
………はずなのだが、当時はフィルムとデジイチの端境期でコンデジを使用していた私の装備(技術?)では限界があることを即座にさとり、結局マクロ仕様のデジイチを持っていただんなに撮影してもらったのが冒頭の写真(見ているとモゾモゾと中から出てきたらしい)。
ちなみに、横から観るとこんな感じ。
さて、このエビの正体は??
訊けば何でも教えてくれる(当時)世界のM下さんから後日いただいた情報によると、この前年(2010年)に串本で、もっと大きなナガヒカリボヤについていたクルマエビの仲間 Pelagopenaeus balboe かも…ということが判明(?)した。
いずれにしても、このホヤにエビがついていること自体が珍しいようなので、めったにない出会いだったのは間違いない。
普段は底に這いつくばりがちな私がいつになく中層でプランクトン化していたのは、ひとえにその日のお天気が良かったからこそ。
好天下の気持ちいいコンディションに誘われて、フワフワと漂っていたのだ。
つまりこの出会いは、お日様と海神様からのささやかなプレゼントだったに違いない。