体長 2cm
イセエビやクルマエビ、サクラエビなど高級食材として昔から有名なエビを除くと、ダイバーに最もその名を知られているエビのひとつが、このフリソデエビだ。
生きているフリソデエビを初めて見たのは、私が勤めていた都内の水族館の水槽の中だった。
1匹1000円もするコブヒトデを餌として与えていたんだけど、フィリピン産のフリソデちゃんたちは長旅の疲れもなんのその、水槽に入れるやヒトデの上に陣取って、ちぎっては投げ、ならぬ「ちぎっては食べ」を繰り返していた。
一見控えめな食事方法に見えるけれど、長い目で見るとまさに「むさぼり食う」という形容がピッタリ。
ヒトデの一部を食べるのではなく、何日もかけてヒトデの影も形もなくなるまでひたすら食べ続け、後にはコロコロしたビーズのような食べかすを残すのみとなる。
水族館でそんなシーンばかり見ていたものだから、フリソデエビにはきれいとか可愛いという印象よりも、むしろ獰猛といっていいほどのちょっと怖いイメージを持っていた。
アオヒトデを食べているところ
イメージはともかく、やはりエビカニ大好きダイバーとしては、見たいエビベスト3にフリソデエビをランキングしていたのはいうまでもない。
が、見たい、会いたいと思えば思うほど、なかなかそれは成就しない。
私がようやくフリソデエビと出会うことができたのは、2001年9月のことだった。
水納島に越してきてから苦節6年目、とうとう私は憧れのフリソデエビちゃんと対面することができたのだ。
念願かなって初遭遇を果たして以後は、そんなに頻繁ではないもののチョコチョコと会うことができているフリソデエビ。
模様が青味がかっているものとピンクっぽいものとがおり、昔は海域による色彩変異といった説明がされていたけれど、それはどうやら食べているヒトデの色に左右されているらしい。
なので同じ水納島の海でも、青っぽいものもいれば…
ピンクっぽいものもいる。
これらはそれぞれ食べているヒトデの種類や色味が異なるのだろうと言われれば納得できるけれど、時にはペアで色味が異なることもある。
食べているヒトデは同じものだろうに、これはどういうことなんだろう?
ところで、ペアでいるフリソデエビはたいてい大小の差があるのだけど、これはやはり大きい方がメスなのだろうか。
エビたちは脅威を感じると体の横を見せずに正対しようとするため、フリソデエビも正面側から撮られた写真を見ることが多い。
そのため気に掛けたことがなかったのだけど、ペアの大きい方をたまたま真横から撮ることができた。
腰の下のサイド部分の甲羅が、昭和のスケバンのスカートのように丈が長くなっていることがわかる。
一方、この時のペアの片割れではないものの、小柄なフリソデエビではその部分は…
それほど発達していない。
やはり大きい方がメスで、抱えた卵を守れるようにガードが発達しているということだろうか?
昔から有名だったわりには、いまだ(個人的に)謎が多いフリソデエビ。
ご存知の方、テルミープリーズ!