甲幅 12mm
その昔のナイトダイビングで、かわいくってきれいなカニを見つけた。
発見時パッと名前が思い浮かばず、後刻図鑑をいくつか見てみると
「イボツブコブシ」
「イボツブコブシガニ」
と、和名が2とおりあった。
同じ方が監修している図鑑で、なおかつイボツブコブシのほうが後発だから、おそらく「イボツブコブシ」が現在の通り名なのだろう。
それにしても、せっかくのきれい&カワイイ系のカニさんなのに、イボだなんて。
あってうれしいものならわざわざイボコロリなどという薬があるはずもなく、一般的にイボといえばあまり好意的なイメージでは受け取られないだろうなぁ…。
他のコブシガニの仲間と同様、突如光を浴びたりして刺激を受けると、フリーズして丸まってしまう姿がまた可愛い。
ナイトだったからこそ表に出ていたイボツブコブシながら、日中は瓦礫の下などに隠れているらしく、昼間に見かけたことはない。
ということもあって、今世紀初頭までは誰にも知られずひっそりと暮らしていたイボツブコブシ。
ところが、すでにその頃にはエビカニ変態社会の足音がヒタヒタと迫ってきており、各地で発見が相次いでいたようだ。
そのわりには、キンチャクガニのようなブレイクが無いまま、その後20年経ってもいまだ地味な存在であり続けているような気がするイボツブコブシ。
やはり名前がわざわいしているのだろうか。
ひところ一世を風靡したキンチャクガニに比べれば、その容姿は遥かに可愛くビジュアル系だと思うのだけど、どうだろう?
ま、せっかく礫の下でひっそり暮らしているのだから、このまま誰にも騒がれずにそっとしておいてあげるほうが、彼らのためであるのは言うまでもない。