(ムカシカクレエビ属の1種)
体長 20mm
ローカル新聞のさらにローカルな小さな記事には、時々生物の面白い話題が取り上げられることがある。
季節ごとの渡り鳥の珍鳥飛来が報告されていたり、新種のエビ発見の記事だったり、脱走していたリクガメが保護されたというニュースだったり。
地方版のささやかなコーナーだから、立派な記事なるのだ。
冒頭の写真のエビは、だんなが2000年に撮ったものである。
水深45mほどで見られるジョーフイッシュ(メガネアゴアマダイ)を撮ろうとしていたところ、まさかのエビの存在に気がつき、撮影したという。
ジョーフィッシュと一緒に住むエビがいるというジジツは当時すでに何度かダイビング雑誌などで写真を見たことがあったこともあって、「おっ、これがそのエビか」と喜んだものの、特に興奮することなく撮影したらしい。
ところがその話を当サイトで紹介したところ、(当時まだ巨匠ではなかった健全ダイバーの)コスゲさんから、
「このエビはまだ日本では撮影されてないはずだ」
というご指摘をいただいた。
そういえば雑誌で見た写真は、すべて海外で撮影されていたっけ…。
おおっ!
ということは、だんなは国内で初めてこのエビを撮ったということではないか。
現像に出していたフィルムが写真となって戻ってきたので、すぐさま当サイトの今は無きニュースコーナーにアップしたのはいうまでもない。
その翌年(2001年)の9月の琉球新報に
珍種のエビ国内で初撮影
という見出しが載っていた。
掲載されていた写真には、なんとこのエビがジョーフイッシュと一緒に写っているではないか。
その記事によると、奄美大島の水深16mで撮影されたらしい。
撮影者のコメントを読むかぎり、そもそもジョーフィッシュと一緒に住むエビがいるということを知らずに発見されたようで、大興奮のもとに撮影した旨述べられていた。
撮影者的には「世界初!!」だったであろうところ、鑑定した研究者の冷静な見解により、見出しは「国内初」になったのだろう。
記事の見出しを見ただんなが、
「”初”と違うがな!」
と、1人で突っ込んでいたのはいうまでもない(詳しくはこちら)。
それにしても、こんなに浅いところにいるのに、なぜこのエビは今まで見つからなかったのだろうか。
個体数が極端に少ないのか、いてもめったに穴から出てこないのか。
いずれにしても水納島ではこのジョーフイッシュ自体が深いところでしか見られないので、そうそう観察することはできない。
ホシカゲアゴアマダイなら浅いところでも観られるものの、はたして彼らもこのエビと一緒に住んでいるのだろうか。
存在は知られても、いったいジョーフィッシュとどういう関係で付き合っているのかということはいっさいわかっていないエビだから、生態的な新発見の余地は、まだまだたくさんあるに違いない。