& Rapipontonia paragalene
体長 12mm
カゲロウカクレエビは、手持ち図鑑の系譜では1999年に世に出た図鑑で初めてその名が登場したから、その儚げな名前のわりには昔から馴染みがあるエビだ。
当時の図鑑もその後世に出てきた図鑑でも、掲載されているカゲロウカクレエビは、冒頭に並べてある4枚のうちの1番の写真の色柄ばかりで、濃淡に多少の違いはあっても、体を走る縞模様は基本的にこのパターンだ。
冒頭の写真ではカモフラージュ効果が抜群すぎる宿主についているからどこからどこまでがエビなのかわかりづらいけど、こういう模様をしている。
お腹のあたりにたくさん並んでいる斜線がキーポイントだ。
ところが水納島では昔から、そのようなザ・カゲロウカクレエビには滅多に出会えず、似たタイプで出会えるエビといえば、そのあとの2番、3番、4番のタイプのものばかり。
この違いは、白い砂底環境に適した体色パターンということなのだろうか。
あいにく図鑑で掲載されているのはザ・カゲロウカクレエビばかりだし、他にビンゴ!なエビの写真も見当たらないから確かめようがなく、これはもう便宜上カゲロウカクレエビってことにしておこう…
…と決めてから10年以上経って、ようやく図鑑にカゲロウカクレエビ似の別種として紹介される日がやってきた。
当コーナーでしばしば紹介している現在最強エビ図鑑「サンゴ礁のエビハンドブック」において、カゲロウカクレエビの隣のページで紹介されている Rapipontonia paragalene である。
なんだ、やっぱ別種だったのか…
ゲストのみなさん、ずっとウソついてました(たまに正解もあったはず)。
このカゲロウカクレエビ似のまだ和名が無いエビ、いちいちカゲロウカクレエビ属の1種と書くのもなんなので、ここでは便宜上カゲロウモドキと呼ぶことにする。
見られる場所は両者でほとんど違いはないのか、ガヤと総称されるヒドロ虫系の生き物についていることが多い。
3番の場合は一見サボテングサについているように見えて異質ながら、そのサボテングサの表面をよく見ると…
ヒドロ虫がたくさんついている。
ヒドロ虫とこのエビたちとがどのような関係なのかは不明ながら、カゲロウカクレエビ&カゲロウモドキは、ヒドロ虫と切っても切れない関係にあるらしい。
ザ・カゲロウカクレエビは水納島ではあまり観られないということなら、ヒドロ虫がいるところについているこのテのエビはたいていカゲロウモドキ…
…ということにしようと思ったら、こういうエビもいた。
パッと見のイメージが異なるけど、模様の雰囲気といいヒドロ虫ラブなところといい、カゲロウモドキの若年個体と思うんだけどどうだろう?
というわけで、昔から馴染みがあると思っていたら、実際に会っていたのは異なる種類だったということが今さらわかってしまい、これまでの出会いの思い出は陽炎のように儚く消えてしまったのだった。