体長 10mm
ボートをずっと水に浮かべておくと、船底その他に藻が生えてくる。
藻が生えない効力がある船底塗料も、時の経過とともにその能力は薄れてくるのだ。
そしてそのまま放置しておくと、船底は藻の養殖場状態になってしまう。
少し生えているだけでも抵抗になって、ボートの速力や燃費を大幅に悪化させてしまうくらいだから、養殖場状態になるまえに処置しておく必要がある。
その場合、数日ほどボートを陸揚げして完全に乾燥させてしまうのが最も手っ取り早いのだけど、あいにく水納島にはボートを陸揚げするためのスロープが無く、陸揚げするためにはいちいち渡久地港まで行かなければならない。
その前後のあれやこれやを考えると大変だから、水納島の場合は次善の策で凌ぐ方がお手軽になる。
次善の策とはすなわち…
…船底掃除。
浮かんでいるボートの下に潜り込み、藻をゴシゴシこすって排除してしまうのだ。
生え始めたばかりの藻の排除はわりと手軽にできるものの、仰向け姿勢で息をし続けていると、たちまち気持ち悪くなってくる。
そのためときどき手を休めて、あたりを徘徊して気分を変えてみる。
桟橋周辺では魅惑的なクリーチャーとの出会いが意外に多いから、それはそれで楽しいひとときになる。
そんな船底掃除の一休み中に発見したのが、このカクレモエビ属の1種だ。
さすがに船底掃除中にカメラを持ってきてはいないから、ただちに家に戻り、おっとり刀ならぬおっとりカメラでさっそく撮影した次第。
真上から。
横から。
けっこうずんぐりむっくりさんのこのエビにはまだ和名がつけられておらず、図鑑的には「カクレモエビ属の1種・2」ということになっている。
和名がまだないくらいだからそれほど一般的ではないのかもしれないけれど、私はこのエビがこういう宿主(イワスナギンチャク)に潜んでいるということは知っていた。
でも普段のダイビングでもしばしばこの宿主をサーチしてはみるものの、これまでは一度も遭遇チャンスに恵まれなかった。
そんなエビが、桟橋脇のうちのボートのすぐ下にいようとは。
ちなみにこの宿主をあちこちいじくってエビを掘り出したりしたわけでもなんでもなく、最初から↓このように姿をさらしていた。
自らのカモフラージュ能力に絶対的な自信を持っている…ということだろうか?
リーフ際などの浅いところならわりとフツーに見られるイワスナギンチャク、そこにただチョコンと載っているエビにこれまで一度も会えていなかったということは、個体数はそれほど多くないってことなのだろう。
今ならもれなく桟橋脇で。
その「今」がいつまで続くかは不明です…。