甲幅 15mm
卒論のためにハナヤサイサンゴに住まう甲殻類たちを相手に悪戦苦闘していた前世紀に比べると、和名がつけられているサンゴガニの種数は随分増えている。
もっとも、当時和名は無くとも遥か昔に新種記載され、立派な学名がつけられているものも多かったのだけど、カストロサンゴガニがアカデミック変態社会に「新種」としてデビューしたのは1997年のことだから、かなり最近の話だ(といっても前世紀…)。
わりとフツーに観られるような気がするのに、なぜそれほどデビューが遅くなったのだろう?
それにしても…なんでカストロ?
黄色がキューバっぽいのだろうか…と思ったら、これはこのサンゴガニを新種記載した研究者のお名前にちなんだものらしい。
ちなみにカストロ氏がこのカニにつけた種小名は lutea で、ラテン語で「黄色」を意味する(はず)。
なので Trapezia lutea とはすなわち「黄色いサンゴガニ」ということで、和名に比べて実に体を表した命名だ。
学名のほうがわかりやすくて和名がなにやら意味不明ってのは、我々末端ユーザー的にはなんだか本末転倒のような気がするものの、ギョーカイの不文律というものもあるのだろう。
その学名のとおり黄色いカストロサンゴガニ(と私が思っているカニ)は、水納島の場合リーフエッジ付近からリーフ上の、ヘラジカハナヤサイサンゴやもっと枝間の狭いハナヤサイサンゴ類で観ることができる。
色が色だけにわりと目立ちはするものの、イボハダハナヤサイサンゴなどのように枝間が狭いと、たとえいるのはわかっても撮るのは大変だ。
その点ヘラジカハナヤサイサンゴに居てくれると、かなりその姿を拝みやすくなる。
ところで冒頭の写真でカストロちゃんがいるヘラジカハナヤサイサンゴは、お魚コーナーでだんなが紹介しているカサイダルマハゼの稿にも出てくるサンゴと同一群体で、リンク先でも述べられているように、もともとリーフエッジで成長していたものが、どこかのボートのアンカーでやられてしまったのか、直下の海底に落っこちてしまったもの。
せっかくカサイダルマハゼが観察しやすいサンゴだったのに、このまま死んでしまうのだろうか…と諦めていたところ、台風が来るたびにゴロゴロしはしても、その都度日当たり良好ポジションをキープしてあげたのがよかったのか、傷みつつもその後も住民ともども健在だ。
そして海底に落っこちたことによって、このような枝間の小さなクリーチャーを観察するうえでとっても便利なサンゴのひとつになった。
まさに怪我の功名。
そんなカサイダルマハゼ御用達ヘラジカハナヤサイサンゴに、黄色いサンゴガニの姿が見えた。
ハゼよりはエビエビカニカニな私としては、ここはもちろん黄色いサンゴガニ(当時は名前を知らなかった)に焦点をあてたいところ。
が。
邪魔なんですけど、カサイダルマハゼ…。
ヘラジカハナヤサイサンゴの広い枝間はカサイダルマハゼを観るにもうってつけで、しかも前述のように砂底に転がっているものだから撮りやすい。
枝間にいるというのに、チョコンと佇んでヒレを広げる姿を観るにもバッチリだ。
エビカニよりは小さなハゼ…というだんなは、せっかくだからその姿を撮ってみようとする。
が。
邪魔なんですけど、カストロ…。
お目当てじゃないモノに邪魔されるという弱点はあるものの、それでもやっぱり広い枝間は観察しやすい。
だから卵を抱えている姿も…。
例によって拡大。
タマタマ~♪
ツルツル感漂う黄色い体に黒いお目目がクッキリしているカストロサンゴガニ(と私が思っているカニ)は、狭い枝間よりも広いスペースにいるところを観たほうが、よりいっそうそのカワイイ姿を楽しむことができるのだった。