体長 10mm
私は知る人ぞ知る、甘辛両党である。
なのでお菓子といえば、いつでも心ときめく。
おまけに日々肉体労働のため、甘いものは何よりの栄養補給剤になる。
疲れているときに甘いものを見れば、反射的に体が動く。
ありがたいことに、シーズン中はゲストの方々から古今東西の様々なスイーツをお土産にいただくから、離島にいながらお菓子に事欠くことがない。
次々に世に登場する今風のスイーツももちろん大好きだけど、上品さが漂う和菓子も捨てがたい。
なかでも一番好きなのは干菓子。
京都が誇る錦市場の店頭でズラリと並ぶ干菓子を目にした日には、同行者の存在やその日の予定など何もかも忘れて、夢の世界へ没入しそうになってしまうほどだ。
なかば気絶状態といってもいいかもしれない…。
そのほか色とりどりの和菓子たちは、見ているだけでもウキウキしてしまう。
そんな心ウキウキの和菓子の中には、「黄身しぐれ」という名のお菓子もある。
ひとくちで言ってしまうと黄身餡のお饅頭なんだけど、和風情緒あふれる名前が素朴で素敵な逸品だ。
そもそも黄身しぐれの時雨とは、製法上饅頭の表面にできるひび割れ具合が時雨の空に似ていることに由来しているそうながら、このエビを観てこの和菓子を思い浮かべられるヒトはかなりの少数派と思われる。
どなたがこのエビの名前を付けたのかは知らないけれど、おそらく私に負けず劣らず甘党の人なのだろう。
イソコンペイトウガニの金平糖とのそっくり度にはまったく及ばないにせよ、なかなか素適な名前だと思う。
あいにく水納島では、前世紀に水深46mあたりのムチカラマツについているのを1度見たきり。
当時はそれがその後長きに渡る「最初で最後」の出会いになるなどとはつゆ知らず、とりあえず証拠写真を、という軽いノリでチャラッと撮っただけで終わってしまった。
もっとも、そんな深いところで粘りに粘ってここぞとばかりに撮りまくっていたら、窒素酔いのために錦市場にいる状態になってしまい、思わずキミシグレカクレエビを手に取り、口の中へ入れていたかもしれない…。