甲幅 10mm
石の下から現れるオウギガニの仲間は数多い。
ただ、オウギガニの仲間を目当てに石をめくるメクリストはかなりのマイノリティで、釣りで言うところの外道扱いにされているケースのほうが多いと思われる…
…のだけれど、たまに冒頭の写真のようなカニさんも登場する。
エビエビカニカニというわけでもないだんなが、まだフィルムで撮っていた時代にわざわざ撮影したくらいだから、よっぽど印象的だったのだろう。
このカニさんは昔から和名がつけられていたコブチリメンベニオウギガニながら、当時唯一最強の図鑑に掲載されていた写真がわかりづらく、2003年に「エビカニガイドブック久米島編」が刊行されるまで、(個人的に)長らく正体不明のカニさんだった。
そのためだんなはこのカニを
「キティちゃんの弁当箱」
と勝手に名づけ、しばらくそう呼びならわしていた。
キティちゃんが実際にこのような色のお弁当箱を持っているかどうかは命名者本人すら知る由もないところながら、子供の頃から慣れ親しんだ、いかにもサンリオ的色味がそう思わせたのだろう。
パッと見ではついついその色味に目を奪われがちだけど、コブチリメンベニオウギガニは、裃でいうなら肩衣の部分にあたるトゲトゲのうちの3つが立派、という特徴がある。
例によって色彩のバリエーションがいろいろあっても、この特徴のおかげでコブチリメンベニオウギガニだと見分けられるから、冒頭の写真はまず間違いなくコブチリメンベニオウギガニだ。
一方、その肩衣トゲトゲがさほど立派じゃない↓このカニさんは…
…やはりコブチリメンベニオウギガニではないのだろうか?
肩衣トゲトゲの立派感はないものの、腰(?)のあたりのシワシワ具合いはコブチリメンベニオウギガニとそっくりで、とりあえず図鑑に載っている他のこのテのカニさんとは違って見える。
とはいえ腰(?)のシワシワだけでコブチリメンベニオウギガニ認定できるとは誰も述べていないから、それはアテにならない。
コブチリメンベニオウギガニじゃないのなら、ではいったい誰?
「キティちゃんの弁当箱」再登場かも…。
※追記(2022年7月)
その後も引き続き調べていたところ、ひょっとすると上の写真のカニは、フクロベニオウギガニ(Liomera caelata)かも…と思える写真をネット上で見つけた。
でもそれは標本写真で、なおかつ甲羅の赤い部分の感じがいささか異なっているから、気持ちよく「ビンゴ!」というわけではないんだけど…。