(と、その仲間たち)
甲長 10mm前後
海の中の小さな生き物を観察、もしくは撮影するのが大好きな方にとってウミシダは、1粒で2度美味しいグリコどころではなく、5度も6度も美味しい魅惑のクリーチャーだ。
ウミシダ自体も個体ごとに彩り豊かだし、そのうえそこに住まう共生生物がとっても豊富。
そのひとつが、このコマチコシオリエビだ。
ちなみにハクセンコマチテッポウエビの稿でも触れているように、コマチというのは町内で美人として評判の女性をいう「小町」のことではなく、京都にいるときゃシノブと呼ばれた女と同じくウミシダの昔の通り名で、甲殻類に多いコマチ〇〇というのはウミシダ〇〇と同じ意味と思って間違いない。
コマチコシオリエビも、数多いコシオリエビの仲間たちのなかにあって、暮らしの場をウミシダに特化している種であるのは言うを俟たない。
宿主の体色のバリエーションが豊富なものだから、そこに住まうコマチコシオリエビも体色のバリエーションは豊富で、冒頭に並べているものたちはすべて、コマチコシオリエビのカラーバリエーション…
…と言っていられたのも今は昔。
今世紀に入ってからどんどん分類学的研究が進み、同じコマチコシオリエビ属にも様々な種類がいることがわかってきたようだ。
だからといって私ごときシロウトが写真だけを見てパッと区別できようはずはなく、冒頭の1番から4番までの写真は、ひょっとしたら全部ザ・コマチコシオリエビかもしれないし、逆にすべて異なる種だったりするかもしれない。
そもそも彼らはウミシダの羽肢(モシャモシャのところ)や巻き枝(岩などをホールドしているところ)に潜んでいるわけだから、特徴的な背中の模様を容易に撮らせてはくれない。
↑この写真を撮影したのは今年(2022年)なんだけど、10年前にまったく同じ場所にいるウミシダで、同じ種類と思えるコマチコシオリエビ系の写真を撮っていた。
だからといって、真横から観て何がわかるというものでもないけれど…。
心無いヒト 探求心旺盛なヒト は指示棒などでチョメチョメしつつ、背中を観やすい場所に無理矢理移動させるのかもしれない。
あいにく遥か以前に「その時代」を通り過ぎてしまった私はそういうことをしないので、正体を明かしようが無いまま終わってしまうのだった。
※追記
その後昔撮ったフィルム写真を物色してみたところ、↓こういう色柄のものもいた。
これはオオウミシダにいたもの。
オオウミシダは肉眼では真っ黒に見えるし、弱い光だと黒っぽいままなんだけど、ちゃんとストロボを当ててオーバーめに撮ると、赤っぽく写るのだ。
そのオオウミシダの色に、ピッタリマッチングしているコマチコシオリエビ…
…とずっと思ってきたのだけれど、2011年に Allogalathea inermis という名で新種記載されたというコマチコシオリエビ属の1種もまた同じような色味で、ときにオオウミシダに潜んでいるという。
はたして上の写真のコシオリエビは、いったいどっちなんだろう?
「オオウミシダに暮らしているものはすべて Allogalathea inermis である」
といったシロウトにもわかりやすい指標があればいいのに、ザ・コマチコシオリエビはオオウミシダにもいるんだよなぁ、やっぱり。