エビカニ倶楽部

コシジロテッポウエビ

体長 35mm

 黄色っぽい体の腰に白いラインが入っている…という、実にわかりやすい特徴&名前のコシジロテッポウエビは、水納島ではごくごくフツーに出会える。

 リーフエッジ付近の、小礫がたくさん混ざる浅い海底に多いクビアカハゼやヤマブキハゼ、ハタタテシノビハゼのほか、そういうところにも多いヒメダテハゼなど、パートナーとなるハゼの種類が多く、またそれらのハゼの個体数も多いから、コシジロテッポウエビも必然的に数多い。

 なので、共生ハゼと共生エビの関係をまだご存知ないゲストの方に、エビとハゼの様子をご覧いただく際にとってもありがたいテッポウエビでもある。

 ただしダイバーでも変態度が増してくると、「フツーに観られるモノ」を見下す傾向があるから、コシジロテッポウエビもそのパートナーのハゼたちも、コアな変態社会での注目度は低い。

 そうはいっても、コシジロテッポウエビにだって、他では観られない個性がある。

 なんといっても彼らは、岩登りが得意だ。

 冒頭の写真のように砂底を這いずることももちろん多いけれど、死サンゴ礫や石が多い住環境だからか、小さな石ころのキワに巣穴を作る傾向がある彼らは、ちょくちょくその石に上るのだ。

 上の写真は身重のメスで、メスでも上るくらいだから、ペアでも上る。

 ↑この写真のパートナーのクビアカハゼはもともと小石の上にチョコンと載るのが好きなハゼだから、コシジロテッポウエビにとっては好都合なのだろう。

 それにしても、巣作りや巣の補修という作業という日々のシゴトと小石の表面は、あまり関係が無さそう。

 いったい何をしているんだろう…と観ていたら、その理由がわかった。

 石の表面は、彼らの食事場なのだ。

 その証拠に、小石に上っている彼らは、ときおり口元を石の表面に直接つけて、何かを食い千切るような動作を繰り返す。

 先ほどのヒメダテハゼと一緒にいるメスも、石の表面に…

 …ムギュッと口をつけるし、こちらでも。

 石の表面で小刻みに動かす小さい方のハサミ脚の動きは、どう見てもエサ探しの動き。

 ハサミで千切れないものを、直接口をつけて齧りとるという寸法のようだ。

 見ようによってはなんとも横着ものぐさ太郎な食べ方ながら、石の表面には海藻その他の食べ物がたっぷり付着しているとなれば、すなわちそれは玄関開けたら2分でコンビニ、くらいの便利な暮らしに違いない。

 こんな食事シーンは水納島でのファンダイビング中に出会える他の共生エビでは観ないから、コシジロテッポウエビ「ならでは」のシーンかもしれない。

 「フツー」はスルー…でいるとけっして観ることができないコシジロテッポウエビのワザ、是非じっくりご覧ください。

 そうすると、卵で一杯のお腹も観ることができるかも。