甲幅 30mm(写真は15mmほど)
擬態や擬装によって身を守っているエビやカニは数多い。
なかにはイソバナガニのように、擬態の対象がイソバナという派手な生き物であるために、カニ自体もとっても派手できれいということもある。
一方、擬態もしくは擬装の対象が地味なものだと、本人自身もたいそう地味というものもいる。
冒頭の写真など、どこがどうカニなのかおわかりいただけるだろうか?
これは横斜め上側から見たもので、もう少しカメラを位置を下げてみると↓こうなる。
それでもやっぱりわからないかも…。
写真を撮るに際し、被写体の小ささをアピールするための対人比用指以外にヒトの手を加えるのは好きではない。
しかし撮ってもカニに見えないんじゃどうしようもないから、「ちょっとゴメンしてけれ…」とさるとびエッちゃん化しつつ、断腸の思いで文字どおり手を加えてみた。
指の上なら、かろうじてカニっぽく見え……ますよね?
これはコワタクズガニ(もしくはその仲間)で、死サンゴ礫が多い水深15mほどの砂礫底で共生ハゼをじっくり観ていただんなの眼に留まったもの。
本人いわく、ジッと砂底に佇んでじっくり観ていなければ、まず気づくことはなかったろうとのこと。
たしかにこの姿では、いるとわかっていてさえ形がわからないくらいだから、通りかかっただけではとてもカニがいることに気づけないだろう。
コワタクズガニに似ている〇〇クズガニと名のつく種類がほかにもいるのだけれど、この綿屑状態でそれらを見分けるのは不可能だから、とりあえずここではコワタクズガニに統一(?)している。
写真のカニがホントにザ・コワタクズガニなのかどうかは不明なので、同定の参考にされないようご注意ください。
というわけで同じ種類かどうかは不明ながら、暫定コワタクズガニは桟橋脇の浅い砂底でもフツーに観ることができる。
係留用のロープにしがみついていることもよくあるくらいだから、わりと個体数は多いのだろう。
だからといって、この地味地味ジミーかつこれといった動きもない綿屑擬装のカニに「是非会いたい!」というヒトの個体数は、けっして多くはないと思われる。
よく見ると、地味ながらもクモガニらしからぬ短い脚ということもあって、全体的なフォルムはなにげにカワイイっぽいんですけどね、コワタクズガニ(暫定)。