撮影実長 15mm
生物学的用語では、海底や湖底に住む生物をひとまとめにベントス、能動的に水中を動く生物をひとからげにネクトン、受動的に水中を動く生物をひとくちにプランクトンという。
これらは大きさにかかわらない。
その昔、だんなんを単身赴任状態で本土に残し、先遣部隊として水納島に滞在していた頃のこと。
当時新進気鋭の若手写真家、それもほとんど自称だったKINDONは、
「おれはネクトンカメラマンで、正恵さんはベントスカメラマンですなぁ」
と、嘯いたものだった。
その頃彼はワイド写真中心、私はマクロ、特にエビカニ中心に撮っていたのだ。
たしかにエビカニの写真を撮ろうとすると、海底や岩、その他あらゆるものにへばりつくことが多い。
そんなベントス生活を送っていたある日のこと。
あまりダイビングのモチベーションが上がらないどんよりとした空の下、水深1.5mのビーチ内で、何かめぼしいものが水面付近にいないかなぁ、と思っていたら、写真のエビが目に入ってきた。
最初は、何か生き物らしき動きをするものがいる程度にしか見えなかったけど、近づいてみて驚いた。
フォルムがなんだかサクラエビにそっくりなのだ。
そのうえ色がメタリックブルーとなれば、これは是が非でも撮らねばならない。
観ていると、水面に漂っている千切れ藻にときたまつかまったりしつつも……
…とにかく泳ぎたいらしく、ほとんどジッとしてくれない(古いポジフィルムをスキャンしているので、画像内がゴミだらけですみません…)。
スィースィーと意外に素早く動き回るこのエビをファインダー内に納めるのに四苦八苦し、30分ほどカクトウした結果、ようやく4カットほどフィルムに収めることができた。
ところがこの時の感動は、結局5年間埋もれることとなってしまった。
その後2000年になってようやく、当時いろいろご教示いただいていた研究者の方にクルマエビの仲間ではなかろうか、と教えていただいた次第である。
標本があるわけではなく、写真といえば冒頭の写真程度なので、さらに詳らかなことは依然不明のままながら、きっと大洋を漂流するタイプなのだろう。
エビカニが好きとはいえ、たまにはプランクトンカメラマンになることも必要なのだなぁ、と痛感した。
でもベントスカメラマンでいることに比べたら、格段にシンドイことも体感したため、たましかやらないけど…。