体長 2cm
私は計画を立てるのが好き。
もちろん楽しいことに関して。
ただし性格的なものか、細部の詰めが甘いため、計画が思ったとおりにいったためしがない。
が、そのわりにはいつも結果オーライとなっている。そういうのは計画とは言わない、といつもだんなに言われるけど…。
海に潜るのもひとつの計画だ。
いつ、どこで、誰とダイビングしようか、ということを、雑誌などの資料をあれこれあさりながら取捨選択していくのもまた楽しい作業なのだ。
水納島で潜ることが日常である我々の場合は、どのポイントで、どのくらいの深度へ行き、何を撮るか、という段階から始まってしまうけど、この程度でもなかなか計画どおりにはいかない。
ある日のこと、海況が思わしくなかったのでリーフの外へ出るのは危険と判断し、ビーチの浅場でのんびり目的もなく潜ろうと計画した(それが計画か?と突っ込まないように)。
計画どおり(?)プラプラとあてもなくさまよいつつ、目についたものをパシパシッと撮り、さてそろそろエキジットしようと思った頃、波打ち際の海藻の切れ端が溜まっているところで、なんとなく心に引っかかる形のものを発見した。
近づいてよくよく見ると、枯れた海藻そっくりの色をしたエビだった。
もちろんこれまで見たことがないヤツだ。
「これはうれしいハプニング、こういうことは計画になくてもどんどん起こってOKよ!」
なんて喜んで撮ろうとしたのだけれど……
…フィルムが3枚しか残っていなかった。
「ご利用は計画的に」
というどこぞの消費者ローンのフレーズが頭をグルグル回ったのは言うまでもない。
フィルムで撮っていた当時こそ図鑑にすら載っていないエビだったんだけど、その後続々刊行されるようになった図鑑では「マイヒメエビ」という立派な和名がちゃんとあって、しかも普通に見られるエビと紹介されている。
普通に見られるというわりには、私はその後このエビ君とは会えないままでいる。
そのため「次に出会うときはフィルム一杯残しておくからね…」というあの日以来の誓いはついに果たされることが無いまま、気がつけば世の中も私もデジカメ時代になっているのであった。