エビカニ倶楽部

マロンちゃん

(イソカイカムリ属の1種)

甲幅 20mm

 イチゴショートとモンブランのどっちが好きかと問われたら、迷うことなくモンブラン!と答える私。

 たとえその後2度とイチゴショートを食べる機会がなくなろうとも、我が生涯に一片の悔いなし。

 何を隠そう、栗が大好きなのだ。

 沖縄ではもちろんのこと栗拾いなどできないから、無いものねだりでいつも頭のどこかに栗のイメージが浮かんでもいる。

 2011年のこと、岩肌になにかいないかとリーフ際でサーチしていたとき、なんとなくアヤシイ感じのカイメンがあった。

 アヤシイというのは、普段見ているカイメンのたたずまいとなんとなく違う気がする…という程度の感覚ながら、念のためにつついてみたら…

 …動いた。

 動くカイメン!!

 …なんてものはいないから、これはきっと被り物系のカニ(カイカムリの仲間)に違いない。

 ちょっと御免してけれ…とさるとびえっちゃん化して引っくり返してみたところ、案の定カイカムリの仲間だ。

 しかも……栗みたい!

 カイメンを被るカイカムリはわりといるけど、これほどまでに栗そっくりなものなど見たことがない。

 思わず一目惚れし、マロンちゃんという名前までつけてしまった。

 そのたたずまいからしてイソカイカムリ属の1種と思われるこのカイカムリ、ひょっとするとシカクイソカイカムリという、沖縄でダイバーによる観察例が多い種類なのかもしれないけれど、どうもシカクイソカイカムリとは顔つきが異なっている気がする。

 栗(?)まで入れた写真だと本体が小さくなってしまうから、カニ本体部分だけ見てみると…

 …やっぱなんか違う。

 ちなみにお腹側はこんな感じ。

 シカクイソカイカムリの特徴を分類学的用語だらけで述べられてもそれがいったいどこの部分の話なのか、調べているだけで疲れてしまうから、何がどう異なるなんて具体的なことは言えないものの、なんか違うじゃないですか。< 共感強要。

 なのでマロンちゃんはあくまでもマロンちゃんで押し通すことにした。

 発見後このマロンちゃんはその年(一部で)大人気になり、2011年のシーズンを通して大活躍してくれた。

 ところが残念なことに、ひと冬が過ぎた頃には姿を消してしまった。

 ひょっとしたら、あまりにもしょっちゅう引っくり返されるので、いい加減にしてよねとばかりに別のカイメンに換えてしまったのかもしれない…。

 この種類のカイメンだからといってみんなこういう形をしているわけではなく、まさにこのカイメンを被っているからこそ「マロンちゃん」なわけだから、別のカイメンになってしまったら、それはソロ活動を始めた国民的アイドル歌手のようなもの。

 ほどなくして忘れ去られることだろう…。

 で、結局マロンちゃんは何カイカムリ?