甲幅 25mm
サンゴの枝間にも魅惑的なエビやカニが暮らしているということを知り、枝間を覗き見るようになった誰もが出会うことになるのが、このミナミトゲアシガニだ。
アフリカ諸国の中長距離種目アスリートのような小顔&長い脚という、スタイル抜群のカニである。
その長い脚の前縁に、鋭いトゲがズラリと並んでいるからこの名があるのだろう。
しかしサンゴの枝間を覗き見るほとんどのダイバーにとってこのカニはお目当てのものとはまったく程遠いカテゴリーのため、よく目にするけど誰だっけ?という存在になる傾向がある。
サンゴの枝間をサーチしているとヘラジカハナヤサイサンゴの枝間にいることが多いミナミトゲアシガニながら、彼らの居住スペースはサンゴ限定ではなく、サンゴの根元の亀裂や岩肌の狭い割れ目の隙間など、平べったい体をうまく隠せる場所に住んでいる。
個体数は多いから興味を持ちさえすればリーフエッジ付近で会えることは間違いないのだけれど、警戒心は相当強く、長い脚を巧みに使って素早く逃げてしまうために、いざじっくり観ようとすると連れなく逃げられてしまうかもしれない。
幸い、サンゴの枝間を除く機会が多いと必然的に彼らと出会う頻度も高くなるから、彼らがすぐさま逃げてしまわないようなちょっとしたツボがわかってくる。
長すぎて本人も位置を把握できないからか、脚の先は工事現場の注意標識のような黄色と黒の目立つ色彩になっていたりする。
また、ジッとしてくれているところをつぶさに観てみると、パッと見だけではわからなかったことにも気づく。
ミナミトゲアシガニ、短めのハサミ脚を含めた顔周辺が、意外に多彩なビューティホーなのだ。
上から見ると黒っぽい体に金赤の眼が印象的すぎてそちらに気を取られてばかりいたから、小さなハサミ脚が実は紫色だったことを知ったときにはいささか衝撃的ですらあった。
ミナミトゲアシガニ、じっくり観ればもっと他にもたくさんの「意外」があるかもしれない…
…と期待しつつちょくちょく気に掛けてはいるのだけれど、今のところ次なる「意外」には出会えていない。