体長 15cm
蝦蛄と聞くとすぐさま江戸前のシャコ、寿司ネタや天婦羅を思い浮かべる方にとって、このモンハナシャコの派手派手カラーはまったくもって異次元ワールドかもしれない。
でも亜熱帯の沖縄でダイビングをしていると、シャコの仲間のなかで最も馴染み深いのがこのモンハナシャコだ。
長さ30cmほどの円筒状のトンネルがゆるいUの字型に作られているモンハナシャコの巣には、出入口がトンネルの前後に2ヵ所ある。
そしてそれぞれの出入り口周辺は小礫で形作られているから、ひと目でそれとわかる。
そこからヒョコッ…と顔を出していることが多いモンハナシャコ。
オトナは15cmほどとわりと大きく、なおかつ派手派手カラーだから、見ようによってはバタ臭さがあるかもしれいない。
でも、巣穴から顔を出しているこの仕草はとても可愛い。
なおかつわりとフツーに出会えるから、一般社会にお住いのダイバーの間でも、昔からその知名度は高い。
目が慣れて巣穴の存在がわかるようになれば、たとえ巣穴から顔を出していなくても、巣穴入口の小礫を指示棒でツンツン…と叩いてみると、「ナニゴト?」という顔をしたモンハナシャコが出てくることもある。
モンハナシャコは日中だからといってただ巣穴に潜んでいるだけではなく、けっこう頻繁に外に出歩いているので、全身を拝む機会も多い。
上から見ると、↓こんな感じ。
↑このように黄色味が強いものがいたり…
↑こんな感じでもっと緑っぽいものもいる。
これが個体差なのか、住環境に合わせて変えているのか、そこまでつぶさに観察し続けたことはないから不明だ。
モンハナシャコが外を歩いているのはたいていの場合エサを探しているときで、けっこう広範囲を動き回る彼らが移動する際には、腹肢を使ってスイースイー…と泳ぐこともある。
その際顔の両脇にあるビロビロ(触角鱗片)や尾にあるビロビロ(尾肢)を、まるで飛行機の羽のように全開にする様はなかなかカッコイイ。
歩いたりときには泳いだりしながらエサを探す様子を動画でも撮ってみた。
この動画では、エサらしきものを発見したモンハナシャコが、得意のシャコパンチを披露する(1分2秒あたり。パチン!という音も入ってます)。英名で「マンティスシュリンプ(カマキリエビ)」と呼ばれるだけあって、シャコパンチこと鎌(捕脚)攻撃はかなり強烈で、その昔干潟で5cmにも満たない小さなシャコをつまんだ際にシャコパンチを喰らってしまい、出血したほどの威力がある。
モンハナシャコサイズともなればパンチの威力は絶大であること間違いなく、それを使って二枚貝など軽くパチンパチンと割ってしまえるのだ。
エサ探しの散歩をしているモンハナシャコはのんびりしているように見えても、カメラ片手にウカツに近寄るとたちまち逃げてしまい、最寄りの穴蔵に入り込んでこちらの様子をうかがう。
どんなに相手が可愛く見えようとも、相手からダイバーが可愛く見えるわけはないので、そのあたりはいつも相手の立場になってあげなければいけない。
お散歩中のモンハナシャコに出会ったら、彼らの警戒心を呼び起こさないよう、そぉっと観てみよう。
すると、望郷の念に駆られたかのように、遠い目をして水面を見上げる彼らの哲学的な姿を垣間見ることもできるだろう。
目といえば。
シャコの仲間の目の形には楕円形のものや台形に近い角ばったものなど種類ごとにいろいろあって、モンハナシャコは真ん丸クリクリお目目。
赤い触角をピロピロさせつつ、両の目をクリクリ動かす仕草がまた可愛い。
この目は複眼だからか、角度によって黒い部分が点1個になったり2個になったり、猫目状に長く伸びることもあるのだけど、片方が黒点1個、片方が猫目状になっていると、なんだかウィンクをしているようにも見えるモンハナシャコ。
横にピンと広がる触角とあいまって、なんだか赤塚不二夫描くところのニャロメにも見えてくるのだった(古すぎ?)。