甲幅 10mm
まだフィルムで写真を撮っていた頃のこと、水深43mの砂底にポツンと生えていたウミトサカに、図鑑でしか見たことがないカニダマシがついていた。
発見したときも現像が上がってきてからも、頭の中ではすっかり「ナカソネカニダマシ」と決めつけていた私。
でも当時唯一無二の情報源だった図鑑を見ていただんなから「なんか模様が違うよ」と言われて見比べてみたところ、たしかに図鑑に掲載されているナカソネカニダマシの模様とは微妙に異なっていた。
これは別の種類なのだろうか、それとも個体差なのだろうか。
他に調べようがなかったために、旧エビカニ倶楽部では「ナカソネカニダマシ?」と「?」マークをつけて紹介していた。
でもエビカニ変態社会が帝国化したおかげで、今ではネット上でこのようなカニダマシの写真まで見比べることができるようになっている。
それらを拝見したかぎりでは、どうやら模様の違いは個体差で、この模様のものも「ナカソネカニダマシ」ということで認識されているようだ。
20年近い時を経て、ようやく「?」マークが取れたのだった。
ところで写真のナカソネカニダマシがついていたウミトサカは、発見した時点で根本からポキンと折れていて、数日後にもう一度訪ねてみたところ、すでに跡形もなかった。
こんなところに育っているウミトサカがなぜ根元から折れてしまうのかはナゾながら、奇跡的な一期一会、とりあえず撮れていてよかった、と胸をなで下ろしたものだった。
その後今に至るまで再会できていないから、手元には当時撮ったたった3枚の写真しかない。
近年はトサカ類がとみに増えてきているから、いずれ訪れるかもしれないチャンスに期待しよう。