甲幅 10mm
※訂正のお知らせ
のっけから訂正文で恐縮ながら、これまで長きに渡って当エビカニ倶楽部でナカソネカニダマシと紹介してきたカニダマシが、実は別種であることが明らかとなったので、ここに訂正し、ナニゴトもなかったかのように引き続き掲載しております。
※訂正のお知らせ終わり
まだフィルムで写真を撮っていた頃のこと、水深43mの砂底にポツンと生えていたウミトサカに、図鑑でしか見たことがないカニダマシがついていた。
発見したときも現像が上がってきてからも、頭の中ではすっかり「ナカソネカニダマシ」と決めつけていた私。
でも当時唯一無二の情報源だった図鑑を見ていただんなから「なんか模様が違うよ」と言われて見比べてみたところ、たしかに図鑑に掲載されているナカソネカニダマシの模様とは微妙に異なっていた。
これは別の種類なのだろうか、それとも個体差なのだろうか。
他に調べようがなかったために、旧エビカニ倶楽部では「ナカソネカニダマシ?」と「?」マークをつけて紹介していた。
でもエビカニ変態社会が帝国化したおかげで、今ではネット上でこのようなカニダマシの写真まで見比べることができるようになっている。
それらを拝見したかぎりでは、どうやら模様の違いは個体差で、この模様のものも「ナカソネカニダマシ」ということで認識されているようだ。
20年近い時を経て、ようやく「?」マークが取れたのだった。
ところで写真のカニダマシがついていたウミトサカは、発見した時点で根本からポキンと折れていて、数日後にもう一度訪ねてみたところ、すでに跡形もなかった。
こんなところに育っているウミトサカがなぜ根元から折れてしまうのかはナゾながら、奇跡的な一期一会、とりあえず撮れていてよかった、と胸をなで下ろしたものだった。
その後今に至るまで再会できていないから、手元には当時撮ったたった3枚の写真しかない。
近年はトサカ類がとみに増えてきているから、いずれ訪れるかもしれないチャンスに期待しよう。
※追記(2024年9月)
そのチャンスが、今夏ついに訪れた!
高水温で白化によるサンゴの壊滅が危ぶまれていた8月、涼を求めて水深30m以深を徘徊していたところ、丈10cmほどのトサカがポツポツ砂底から生えていた。
丈10cmほどだとさすがに様々な生物が…というわけにはいかないものの、念のためにチェックしてみたら…
…ついに念願の再会を果たすことができた。
ところが。
ホントにこれがナカソネカニダマシなのかどうか、沖縄県屈指の甲殻類オーソリティであるF教授に念のため問い合わせてみたところ、同属ではあるけれど明らかにナカソネカニダマシではないと見たF教授は、その人脈を通じてカニダマシ類のオーソリティ(島根大学の大澤正幸氏)に問い合わせてくれた。
その結果このカニダマシは、おそらく「サラサカクレカニダマシ」であろう、ということに。
サラサカクレカニダマシは、2009年に日本初記録種として和名がついたカニダマシだという。
そのジジツをご教示いただいた私は、ハタと気がついた。
ひょっとして、リニューアル前から随分長い間エビカニ倶楽部で「ナカソネカニダマシ」として紹介し続けてきたカニダマシもまた、サラサカクレ…なんじゃ?
甚だ恐縮ながら、それについてもついでにF教授にお尋ねしてみたところ…
「サラサカクレカニダマシだと思われます。」
…と断言していただけたのだった。
皆さま、今までウソをつき続けてきてゴメンナサイ。
せっかくだからこの機会に、ようやく再会できたナカソネあらためサラサカクレカニダマシの、甲羅の模様が観やすい別アングルの写真も。
F教授によると、ナカソネとサラサカクレとは、細部の形態的にはわりと容易に両種を区別することができるらしいものの、写真によるその差異の見極めとなるとちょっと難しいかも、とのこと。
我々シロウトが区別するにあたっては、ナカソネカニダマシの甲と歩脚には赤い細い線が入るという特徴があるそうで、その有無でナカソネかノットナカソネかがわかるらしい。
ちなみにサラサカクレカニダマシには個体ごとの体色の変異が多いらしく、海外では全体的に赤い個体も確認されているとのこと。
というわけで、およそ20年ぶりの再会を果たしたことがきっかけとなり、ここにサラサカクレカニダマシとして再登場する運びとなったのだった。
以後、お見知りおきくださいませ。