(オウギガニ科の仲間たち)
甲幅 10mm前後
カニさんたちは、とにかく種類が多い。
多いだけに、一般向けの図鑑に載っているのはわずかといっていい数でしかなく、ダイバーが海中で目にできるものがすべて載っているわけでもない。
日中は石の下に潜んでいる小さく地味な種類ともなると、もちろんのこと我々シロウトには正体を知る手がかりがないものも多い。
それでもかろうじてそのフォルムから「オウギガニ科のカニさん」だろう…と見当がつくものたちを4種類ほどラインナップしたのが、冒頭の写真のカニたちだ。
いずれも甲幅10mmほどの小さなカニさんで、日中は石の下に潜んでいるものばかり。
メクリストの手がついていない死サンゴ石ゴロゴロゾーンなら、1つの石の下に複数匹いることも多いのだけど、姿が露わになるやあっという間に別の石の下に避難してしまう(けっこう素早い)ので、おそらく写真に撮ることができた種数の10倍以上は見逃していると思われる。
1番はフィルムで撮っていた頃で、特徴的な模様だからすぐに種類がわかるかな…と思いきや、撮影後20年経った今もなお、図鑑を見てもネット上を探してみても、ビンゴ!な写真がどこにも載っていない。
2番は、背中の模様の感じからしてデマンヒヅメガニ(Etisus demani)ではなかろうかと思うのだけど、なにしろ手掛かりにしたものは標本写真なので、色味が全然異なっている。
ちなみにこの2番のカニは、お腹に卵を抱えていた。
「抱える」という言葉の範囲を遥かに超えた、大量の卵がお腹に。
卵を抱えている最中の身動きのことを考えれば、もう少し少量にしておいたほうがいろいろと便利に思えるのだけど、サバイバル世界に生きる彼女たちのこと、産める時に産んじゃえ!ということなのだろうか。
3番は、正体不明系オウギガニの仲間にしては、繊細な色味が美しい。
このカニさんもまた、卵を抱えていた。
4番もまたフィルムで撮っていた頃の写真で、なにしろ20年以上前のことだから、砂地のポイントのリーフ際で3月に撮ったという記録は残っていても、まったく記憶に残っていない。
でもかろうじて背中がわかる写真を見てみると、ひょっとするとヒメヒヅメガニ(Etisus electra)じゃなかろうか…という気がする。
石の下にはまだまだ未知のこのテのカニさんがたくさん潜んでいそうながら、石の下の環境保全協会会員としては、おいそれと彼らの住環境を乱すことはできない。
彼らと出会うには、石の下からワラワラと出てくる時間帯に、それぞれ個別に出会うしかない。