体長 10mm弱
冒頭の写真のクリーチャーを、ワタシは長い間ホソツツムシの仲間の全身だとばかり思いこんでいた。
…そばにホソツツムシの棲管があったから。
でも随分経ってから写真をよく見てみると、目立つ触角が1対しかないし、鎌のような脚があるわけでもなさそうなことに気がついた。
じゃあ、誰?
調べてみたところ、コイツはどうやらオニナナフシ科というグループに属する甲殻類であるらしい。
ナナフシとは昆虫の1種で、こういう姿形をしている。
なるほど、似ているかも。
ただしナナフシが前にビヨ~ンと突き出している2本は脚なのに対し、オニナナフシが前に突き出しているのは触角という違いがある。
というかそれ以前に、オニナナフシという名ではあっても、実はワラジムシの仲間(等脚類)なのだとか。
オニナナフシの仲間のなかでも極地の深海で暮らすものたちはわりと大型になり、アークティック・アイソポッドなんていうカッコイイ名前で展示している水族館もあるようだ(アイソポッドはオニナナフシが属する「等脚類」の英名)。
こんな形で10cmくらいあったら、かなりのエイリアン級。
でも冒頭の写真のものでせいぜい1cm弱、同じ種類かどうかは不明ながら、オニナナフシ科の1種であろうと思われる↓これは、5mmに満たないほど。
ヘタをすると不毛に終わるかもしれない砂底グリッドサーチをしていたところたまたま見つけたもので、これを探せと言われてもまず無理。
個体数はけっして少なくはないのだろうけど、ホソツツムシのようにいるところにはたくさんいるというわけでもないらしく、変態社会御用達のドロノミやワレカラなどは言うに及ばず、ホソツツムシと比べても、ネット上で見ることができる海中で撮影された写真は圧倒的に少ない。
いわば千載一遇だったのだ。
ああそれなのに、ホソツツムシの全身だと思い込んでいたなんて…。
変態図鑑「海の寄生・共生生物図鑑」(築地書館 刊)によると、なんとこのオニナナフシ科の仲間たちも孵化したチビたちを保育するそうで、チビチビたちが親に群がるなんとも微笑ましい写真が掲載されていた。
それは是非観てみたい…。
子育て中のオニナナフシとの遭遇を目標に、また砂底を変態的にグリッドサーチしよう。