エビカニ倶楽部

パイプウニエビ

体長 1cm

 小学5年生の頃の私は「星の砂フリーク」だった。

 そのころの私にとっての沖縄は、星の砂の産地としてインプットされているに過ぎなかった。

 まさかそこに進学し、そこで仕事をするようになるとは夢にも思っていなかったのだから、人生とは不思議である。

 今やありきたりすぎて沖縄土産に星砂を買って帰る観光客などまずいないだろう…と思いきや、相変わらず土産物店に並んでいる小瓶詰め星砂と同じ昔ながらの土産品に、パイプウニの棘で作った風鈴があった。

 生きているパイプウニは↓こんな感じ。

 このあか抜けない姿からは想像もできないほどに、パイプウニの風鈴は繊細な音がするなかなか風流な品だ。

 沖縄に来てからの私はこのパイプウニの棘にも異様に執着し、海中でこの棘を発見するたびに喜々としてテイクアウトグッズにしていたものだった。

 ところがナイトダイビングをするにおよび、場所によってはパイプウニがウジャウジャおり、まるでパイプウニ地獄のようになるのを見て、なんとなく興味は薄れていってしまった。

 そんなある日、図鑑でこの写真のエビを発見したのである。

 当時はこのエビの生態写真が載っている図鑑はその一冊しかなく、そこに記されていたことを頼りに、再びパイプウニ熱に侵されることになった。

 まだダイビングの仕事をする前のことだったから時間はたっぷりあり、蠢くエビカニをたくさん観ることができるナイトダイビングをしばしばやっていた頃だから、夜潜るたびにパイプウニサーチを繰り返し、ついにこのエビに出会えた。

 ライトに照らし出された小さな体は本当にパイプウニの棘そっくりの模様で、まるで棘の間でかくれんぼしているようにピッタリはりついている。

 なかなか優れた擬態ながら、目が慣れてくるとわりと高確率で発見できたので、個体数そのものは少なくないようだ。

 日中は岩穴の奥に隠れているパイプウニは、夜になったらワサワサと外に出てくる。

 もしナイトダイビングでパイプウニ地獄を見たら、ウヘェーと思わず、パイプウニエビたちのかくれんぼに付き合ってみよう。