エビカニ倶楽部

ミクロヤドカリ属の1種

Micropagurus polynesiensis

甲長 5mm

 「小さい」という意味を表す「ヒメ」はすでに使用済みだったからか、今度は「ミクロ」。

 属名の Micropagurus からそのままもってきたのだろう。

 ミクロというだけあってとっても小さく…

 ↑この写真では、貝殻についているチャツボボヤの仲間の直径がせいぜい5mmほどだから、ヤドカリ自体は相当小さい。

 ヤドカリさんたちの分類学的研究はあらかた研究され尽くしているのかと思いきや、こういったサイズのモンダイもあるのだろうか、ミクロヤドカリ属についてはまだまだ未詳のままになっているものが多いようだ。

 この Micropagurus polynesiensis 略してポリネシエンシスも、立派な学名こそついているけれどその守備範囲はかなり広く、あれもそれもこれもどれもポリネシエンシスということにしてしまっているフシがある。

 ザ・ポリネシエンシスである、と私が(勝手に)自信をもって言える色味は↓こんな感じ。

 眼柄から脚の付け根にかけて赤く、ハサミの部分が緑っぽくなっているタイプ。

 ところが現在のゆるいポリネシエンシス規定(?)では、このあたりの色の自由度(?)がかなり高く、↓これなどは眼柄の色がまったく異なるし…

 さらに各部の色、特にハサミの色がまったく異なる↓これも…

 ↓これも…

 そして↓これも…

 み~んな一応ポリネシエンシス、と言ってしまっても、「それは違う!」と声を大にして異を唱えることができるヒトは今のところおそらくいないと思われる。

 ただし近年になってようやく、ちょっと違うようだぞ…というモノについては別種扱いになってきているようで、まず明らかに全体が白く、顔周辺に赤い色味が無く、歩脚の先に細い赤線が入っていない↓これや…

 ↓これは…

 少なくともどちらかは、 M. propinquus という学名がつけられている別種かもしれない。

 また、眼柄だけがピンクの↓これも…

 おそらく別種なのでは?とされているものと思われる。

 ただしこの「別種」は、研究者が顕微鏡サイズで形態を比較して初めて明らかになるものなのだそうで、こんな小さなヤドカリの顕微鏡レベルの違いを、我々シロウトが海中観察もしくは画像チェックで区別できるはずはなし。

 なにしろ一連の写真でお気づきのとおり、彼らときたら手脚の細かな毛に小さな砂粒やゴミをつけるのが好きらしく、手脚の形や色などてんでわからない状態になっているものが多いのだ。

 これで「顕微鏡レベルじゃなければ見分けがつかない」と言われてしまえば、シロウトの私としては潔く、すべてポリネシエンシスってことにしてしまうのであった。

 ここで紹介している画像はすべてボートダイビングの際に撮影したものだから、少なくとも通常のファンダイビングで出会える場所にいると思われるポリネシエンシスたち。

 ただしこれまでサーチして見つけたことはなく、ふとしたはずみで妙なところに貝殻があることによって存在に気づくというパターンだから、どういったところをサーチすれば遭遇率が高いか、ということはあまり気にしてこなかった。

 どこにいようともとにかく彼らは小さく、たとえばチャツボボヤの間にいるものなんて…

 …こんなに小さい。

 ちなみに↑これは、前述の別種と思われるホワイティ。

 白いのが出てくるか、赤いのが出てくるか、クラシカルアイともなれば、最初からヤドカリさんの存在に気づこうなどと無理はせず、変なところにある小さな貝殻を気にかけたほうが、出会う機会がきっと増すことだろう。