体長 25cm
セミ捕りは、小学生の頃の夏休みのとっておきの楽しみのひとつだった。
もっとも、成虫の寿命が短いことや、樹液を吸うしか食事のしようがない、ということは子供心にわかっていたので、捕りはしてもその時虫かごに入れてシゲシゲと眺めるだけで、その後すぐに逃がしていた。
いったい何が楽しかったんだろう…。
やはり、「捕まえる」という行為そのものが、純粋に楽しかったのかな。
ところでみなさんは、セミにも種類ごとに、好む木、とまる位置、現れる時期といった特徴があるのをご存じだろうか。
そのような種ごとの特徴に鑑みて、捕まえるのが最も簡単なのはアブラゼミ、難しいのはツクツクボウシ、という序列ができあがっていた。
私の子供の頃なら、こういうことに関しては大人よりも子供のほうが圧倒的に詳しかったものだけど、良きにつけ悪しきにつけあらゆる分野で変態社会が横行している現在では、なんであれ詳しい大人のほうが多過ぎて、子供たちはただただ大人から教わってばかりなのだろう。
さて、写真のエビは、岩につかまっている姿が木にとまっているセミに似ている、ということでセミエビという名前がついている。
足が短く、なんとなくどんくさそうなそのイメージは、セミ捕り少女だった私には、数あるセミの中でもアブラゼミと重なる。
やや平べったい体形と体色を周囲の質感に似せるあたりは、ニイニイゼミも入っているかな。
危険を感じたらピシッとオシッコをして飛び去る「逃げ技」がどんなセミにもあるのに対し、セミエビは、その愚鈍そうな外見からは想像もできない素早い動きで、ビュッと移動して目をくらますことができる。
ただ、その危険を察知するまでがドンくさい。
夜潜っているときなどに発見したら、素手でワシッと捕まえることすらできるほどだ。
それも、何かの陰に潜んでいるわけでもなんでもなく、小岩につかまって逆立ちポーズを決め込んでいたりする。
↑これは夜のビーチの中、水深1.5mで撮ったもので、そんな浅いところで逃げも隠れもしないといえば聞こえはいいけれど、この状態で簡単に掴めるほど危機感が欠如しているってのはどうなのよ…。
まだ前世紀のゆるやかな時代だったこともあり、撮ったあとよっぽどBCのポッケに入れて持って帰ろう…と思ったものの、あまりの無防備さに感心するやら呆れるやら。
その姿を観ているうちに、捕獲意欲も食欲も消え失せてしまった。
無防備に徹することで身を守るという、これも一種の防御手段なのかもしれない?