エビカニ倶楽部

シカクイソカイカムリ

甲幅 10mm

 このコーナーで紹介しているカイカムリの仲間たちのうち、オオカイカムリは日中にはまず外でウロウロしていないし、雪ん子はダイバーにいじくられでもしないかぎりそうそう動いていないし、マロンちゃんもゴッグも日中は基本的にジッとしている。

 ところが箸置きのような形の海藻を背負ったカイカムリは、なぜだか日中ウロウロしている。

 …というか、ウロウロでもしていないと、どう見たって海藻の切れ端が鎮座しているだけに見えるから、ジッとしているときは見逃しているだけかもしれない。

 この海藻はカイメンソウという種類だそうで、リーフ内などこの海藻が生育している浅いところであれば、好んでこの海藻を背負っている。

 このカニさん、その名をシカクイソカイカムリという。

 よく目にするカニさんにしては聞きなれない名前だなぁと思ったら、それもそのはず、新種としてアカデミズム変態社会にデビューしたのは19世紀のことながら、本邦で和名がついたのは今世紀のことのようだ。

 単に和名登場が遅かっただけで、ダイバーによる観察例はとても多く、ネット上でも綺羅星のごとくシカクイソカイカムリの写真が出てくる。

 とはいえ、では形態的に他とどこがどう違うのか、なんてことは我々シロウトにはどうあがいてもわからないのだから(そもそも何が四角なのだ?)、悩んでいてもしょうがない。

 Don't think, feel!

 とにかくこのカイメンソウを背負っていれば、シカクイソカイカムリ。

 ところが!

 カイメンソウラブなのは手軽にカイメンソウが手に入る場合だけらしく、異なる環境下では違うモノを背負っていることを知った。

 よりにもよって、チャツボボヤ。

 チャツボボヤといえばユキンコボウシガニ改めオガサワラカムリの専売特許かと思いきや、同じものを背負ってわざわざニセモノになるなんて…。

 ちゃんと見れば形うんぬん以前に眼の色が違うから、すぐにそれとわかる(それで区別していいのであれば、だけど)。

 眼を見ればニセモノとわかるだなんて、まるでザラブ星人扮する偽ウルトラマンではないか。< R50

 本人的にはちゃんとチャツボボヤ系の群落の中で佇んでいるつもりのようながら、周りのホヤたちとは圧倒的なサイズ差があるから浮きまくりで、ひと目で「ん?」と気がついた。

 雪ん子なみに小さい頃だと、はたして見分けがつくだろうか…。

 チャツボボヤを被るくらいなら、カイメンだって被るのだろう、だから↓この甲幅5mmほどのカイカムリも…

 Don't think, feel!でシカクイソカイカムリ。

 ところでこの黄色いカイメンを被っている子はリーフ際の水深10mもない浅いところで2月に撮ったものなんだけど、その5ヵ月後にほぼ同じ場所で再会した。

 ん?再会??

 どうもカイメンの形が冬に会った子と異なっているような気がする。

 ちょっと御免して、体をちゃんと見せてもらった。

 あらら、気のせいかと思いきや、体の色まで違うし、質感も随分異なっていて、短毛がポワポワしている。

 Don't think, feel!とはいいつも、ここはひとつ写真で見比べられるところを見比べてみよう。

 カイメンソウを背負っている子の顔…

 チャツボボヤを背負っている子の顔…

 そしてオレンジレンジな子の顔は…

 砂粒だらけでよく見えないけど、こうして見比べてみると、むしろチャツボボヤ装備の子と顔がそっくりな気もする。

 チャツボボヤの子は、ホントにシカクイソカイカムリなんでしょうか?

 そもそもゴッグやマロンちゃんは結局のところいったい誰?

 オレンジのチビはゴッグの小さい頃とか?

 〇〇カムリと名のつくカニさんは日本だけでも40種類近くいるのだから、ここで紹介してるものたちがそれぞれまったく別の種類であってもおかしくないし、逆に成長段階の違いだけで実はみ~んな同じ種類なんです、ってことになるかもしれない。

 とはいえそこまで踏み込んでしまったらもう2度と一般社会に帰ってこられなくなりそうだから、やはりこういう場合は…

 Don't think, feel!

 (ご存知の方、テルミープリーズ!)