体長 3cm(推定)
生前はダイオウサンゴだったのであろう直径1mほどのドーム状の死サンゴ岩が、普段よく潜る砂地のポイントの砂底に鎮座している。
我々が島に越してきた頃にはすでに岩と化していたから、ひょっとすると生きていた期間よりも、岩になってからのほうが長いかもしれない。
ドーム状だけに表面にさほど凹凸が無く、魅惑的な刺胞動物がたくさん付着しているわけでもないのでサーチ対象になることはあまりなく、必ず立ち寄る場所というわけではない。
ところがあるときたまたまフラリと寄ってみたら、その天辺から顔を出している小さなシャコの仲間に出会った。
7年前(2015年)の師走のことである。
巣穴の直径が1cmにも満たないほどの小さなシャコなので、引っ込んでしまわないよう遠目に撮っても、画面の中でゴミのようにしか写らない。
なんとか引っ込まないギリギリのところで頑張ってみても、せいぜい↓この程度で終わってしまった。
その2日後に再訪してみると、このチビ黒シャコは健在で、2日前よりももう少し近寄らせてくれた。
ただ黒いだけかと思いきや、体には白い模様が、そして触角はなにげにトロピカル。
年が明け、弥生3月春うらら、さすがに3ヵ月も経てば居なくなっているかな…と諦めながら再訪したところ、驚いたことにまったく同じ場所に健在で、より一層身を乗り出してくれた(冒頭の写真)。
カメラに慣れてきたんだろうか?
残念ながら彼の頑張りもその年の春までとなり、その後は再会していないから、結局全身を拝むことができずに終わってしまった。
せいぜい3cmほどであろう小さなシャコ、その顔部分だけで種類がわかるほど世間は甘くあるまい…
…と諦め、これまで正体を突き止める努力を怠っていたのだけれど、今回新たにこのシャコをアップするにあたり、ちょっとばかり調べてみた。
すると意外や意外、体の白い模様と触角のトロピカルカラーを手掛かりに、おそらくこれだろうという見当がついてしまった。
その名もシワトジオシャコ(Haptosquilla glyptocercus)。
フトユビシャコかハナシャコの仲間かと思いきや、ウニシャコ科に属するシャコらしい。
この和名がいつつけられたものなのかは不明ながら、トジオシャコというグループがあるようだから、単語はシワ・トジオ・シャコで区切る意味になる。
ただしその和名で画像検索してみても、ヒットするのは美容系の皺に関する画像ばかり。
その点、19世紀にはすでにその名で新種記載されていた学名で検索してみると、出てくる出てくる(というほど多くないけど)、黒っぽいシャコたち。
体色にはバリエーションがあるようながら、白い模様とトロピカルアンテナがまるっきりビンゴ!な画像がいくつかあった。
また、当コーナーでお馴染みのF教授の手による論文(PDFファイル)に掲載されている図2のFの標本写真もまたビンゴ!で、そこにはしっかり「シワトジオシャコ」と記されている。
これでもう、アカデミック変態社会に認定してもらったも同然だ。
私の「ビンゴ!」がホントにビンゴなのか、というモンダイは残っているけれど…。