甲幅 50mm
感触フェチなら思わず手を出さずにはいられない名前も手伝って、色味が地味なわりには可愛げがあるスベスベマンジュウガニ。
でも実はこのカニは、コワ~イ種類でもある。
といっても、なにもハサミを振り上げて襲いかかってくるわけではないし、触れたからといってなにがどうなるわけでもない。
どこがコワイかというと、このカニさんは筋肉部分にサキシトキシンという、ほとんどフグ毒(テトロドトキシン)と同等の害をもたらす毒を備えているのだ。
もともとはプランクトン由来で、それらを摂取した貝に濃厚に蓄えられており、そのような貝を食べることによってこのカニさんにも蓄積していくのだろう。
フグ毒と同様の症状に至るということは、すなわち食べれば死ぬ危険性があるということ。
このカニを誰かがうっかり獲っちゃって、何も知らずに食べたらかなりヤバイことになる。
ただしスベスベマンジュウガニは夜にしか徘徊しないようなので、今のところこのカニの中毒でえらい目に遭ったというヒトは、少なくとも水納島にはいない。
冒頭の写真はまだ水納島に越してくる以前にビーチでナイトをした際に出会ったもので、よく観るとお腹に無数の卵を抱えている。
30年近く前の時点でこのカニの毒について知識があったかどうか定かではないのだけど、もし知らずにこのカニを見つけていたら、美味しそう…とばかりに手を出していたかもしれない。
当時それを思いとどまらせてくれたのは、毒についての知識ではなく、ひょっとするとお腹に抱えているたくさんの卵のおかげかもしれない。
卵ちゃんたち、ありがとう。