エビカニ倶楽部

スジエビモドキ

体長 2cm

 小学生の頃、よく釣りをした。

 といっても近所の川なので、ほとんどの場合エサは石をめくると出てくるカワムシだったけど、時々スペシャルな獲物にターゲットを絞った時は、近所の釣り道具屋でエサを買っていた。

 釣り道具屋で売っているエサといえば、サシ(ウジ虫)や練り餌のほか、イクラ、さなぎ、ミミズ程度であったろうか。私はたいていサシを買っていた。

 社会人になるとさすがに川遊びからは遠ざかったけれど、ちょっとした用事で東京の大型釣具店に入ってビックリした。

 そこには海釣り用の生き餌がたくさん置いてあったのだ。

 世の女性が大喜びしそうな(?)ゴカイやイソメがゴマンといるのである。

 そしてそれら海釣り用のエサのコーナーに、このイソスジエビもウジャウジャ蠢いていたのだった。

 釣りの用事で店に入ったわけでもなかったのに、私はそれらをしばらく眺めていた。

 いったいこのエビをこんなにたくさんどうやって獲るのだろう?

 天然でもひとっところにウジャウジャいるのだろうか?

 ……などと考えつつ生き餌コーナーに佇んでいた私は、きっと端から見れば「変な女」であったに違いない。

 イソスジエビは、水納島でも桟橋の壁にチョロチョロと数匹が遊んでいるのが見られるけれど、けっして生き餌コーナーのように団体でいることはない。

 自然下ではどこでもこのような暮らし方なのなら、あの生き餌コーナーのイソスジエビはいったいどうやって……?

 かつての疑問は深まる一方だ。

 夜中に光をともし、そこに集まる彼らを一網打尽にするのかなぁ。

 いずれにしても、変態社会人の世になった今でも、さすがに「イソスジエビを見た~い、写真を撮りた~い!」という人はいないし、いる場所がいる場所なので案内することもない。

 釣り具屋さんの餌コーナーのようにウジャウジャいたりしたら、一躍ダイビング業界でもメジャーデビューするかもしれないけれど…。

 …と、これまでずっと冒頭の写真のエビをイソスジエビと思い込んで生きてきたのだけれど。

 イソスジエビと似たような場所で暮らしているスジエビモドキというそっくりさんがいて、こちらのほうが小柄で、なおかつ尻尾背面の黒い筋模様がイソスジエビよりも少ない。

 その特徴に鑑みても、どうやら冒頭の写真のエビはスジエビモドキのようだ。

 となると、ダラダラ書いた懐かしい釣り餌の話は、まったく関係ないことに……。