体長 3cm
水納島の海で最もフツーに出会えるサラサエビの仲間といえば、ヤイトサラサエビとこのスザクサラサエビだ。
ただしヤイトがリーフ際の浅いガレ場の石の下でも観られるのに対し、スザクサラサエビはもう少し深いところを好むようで、ハナダイやスカテンなどが舞うような根にたくさんいる。
他の夜行性のサラサエビ類のようにまったく光が当たらないところではなく、フツーに肉眼で姿を拝める明るいところにもいる。
しかも1匹や2匹といった慎ましやかな数ではなく、ゾロゾロと群れて暮らしている。
曇り空の日の水深30mほどの根ともなると日中でも照度が低くなるからか、大小様々なスザクサラサエビたちが根の表に這い出て勢揃いしていることもある。
フィルムで写真を撮っていた頃は36枚+Eのコマと限られた回数しかシャッターを押せないから、いつ行っても当たり前のように出会えるしウジャウジャいるエビをわざわざ撮ろうという気にならず、出会った個体数のわりに写真が無い率ランクがあったら、おそらくヤイトサラサエビとともに1位を争うこと間違いなしだ。
その点デジイチになるとほぼ枚数無制限だから、ウジャウジャサラサエビ系にカメラを向ける機会も増した。
スザクサラサエビもオスは腕がビヨ~ンと伸長する。
群れの中でオスは1匹だけのようで、ハレム社会なのかもしれない。
ゾロゾロと暮らしている群れにはチビチビもたくさんいる。
どちらかというとハッキリクッキリしすぎてケバいといってもいいオトナとは違い、チビチビにはなかなか繊細な趣きもある。
彼らがワラワラゾロゾロいるところに無遠慮に近づくと、長い脚を使ってみんないっせいにキビキビ動いて暗がりに逃げ込んでいく。
その様子はそれはそれで面白いけれど、こちらが無害であると彼らに思ってもらえれば、スザクサラサエビたちのほうからワラワラと近寄ってくることもあり、手を差し延ばせばツンツンとクリーニングしてくれることもある。
これは巷間語られるようにクリーニングをしてくれようとしているのかもしれないけれど、なんとなくその様子は、温泉状態になったタイドプールで寝そべっているときにカニがチクチク攻撃している時と同じように、実は掃除じゃなくて食べようとしているだけなんじゃ…。
そう考えると、みんなの視線が一斉にこちらに向くと、数が数だけになんだかスターシップトゥルーパーズ的不気味さが…。