体長 20mmほど(外側のクラゲのサイズ)
コロナ禍で世の中がえらいことになっていた2021年2月のこと、1年を通じて水温が最も低い時期にもかかわらず、呑気に海へ繰り出したところ、クラゲがたくさん流れていた。
流れていると眼前を様々なクラゲが流れていくからそれを見ているだけでも楽しい。
でも何度も触れているように、ただクラゲをボーっと眺めているわけにはいかない。
この日はさらに目をスモールモードに切り替えていたところ、2cmほどの小さなクラゲに目が行った。
小さなクラゲ(サルパ?)に見えつつ、クラゲ(サルパ?)にしてはプインプイン…と妙な動きをしていたのだ。
これはきっとナニモノかに違いないと思い、とりあえずたくさん撮ってみた写真を後刻見てみると…
ハサミが見える!
さらに甲殻類っぽい尾や脚も!
やはりクラゲではない「ナニモノか」だった。
で、ナニモノ?
どうやらこれは、タルマワシという端脚類の仲間のようだ。
彼らは一部のクラゲやサルパなどをエサにし、しかも中身を食べた後のクラゲやサルパの外側を住居にしてしまうという、寄生どころか命を奪ってから利用するという、エイリアン級の凄まじい生き物らしい。
すなわちこれ全体がひとつの生き物ではなくて、クラゲハウスの中からハサミ脚その他体の一部を出しているだけだから、どこが頭でお腹がどこで、どこからお手手が出てるやら、見れば見るほどわからないグルグルパッパのグルッパークリーチャーでもある。
クラゲハウスの種類によっては、透明な壁を通して本体がちゃんと見えることもあるようながら、このクラゲハウスはデコボコしているうえに半透明だから、せいぜいこんな感じ。
どっちにしろグルグルパッパ…だ。
ハサミが出ているからそっちが前なのかと錯覚してしまいそうだけど、ハサミを後方に伸ばしているらしく、そちらが尾になる。
おそらくこの尾を使ってプインプイン…と泳いでいるのだろう。
タルマワシ科は現在世界で11種類いるそうで、そのうち和名がついているものは、「オオタルマワシ」「アシナガタルマワシ」など5種類いるという。
もちろんのこと私が出会ったこのタルマワシがそれらのうちのどの種なのかなんてことはわかるはずもないけれど、こういうクリーチャーは「見たい!」からといってそうそう会えるものではないということを思えば、千載一遇の大チャンスだったのは間違いない。
寒く冷たい冬の海に潜った甲斐としては、最大級のヨロコビなのだった。