撮影実長 18cm
最初にお断りしておくと、この写真はヤラセです。
それをふまえつつ。
車えびといえば、押しも押されもしない高級食材のひとつであることは言うを俟たない。
なので十年一日のごとく清貧生活に甘んじている我々には高嶺の花、生涯手の届くところに舞い降りて来てくれることなどあるはずはない。
ところが!
縁は異なもの味なもの、まことにありがたいご縁があって、毎年お正月に合わせて贈っていただく年が長く続いている。
もちろんながら高級食材として世に出回っている車えびはもっぱら各地の養殖場で育てられたものたちで、野生のクルマエビの流通はごくわずかでしかない。
我々がいただいている車えびも養殖場で手塩にかけて育てられたもので、おまけに活車えびだから、水納島のような辺鄙なところに何日もかけて届いてもなお、箱を開けるとまさに「活きて」いる。
写真だけじゃわからないその様子は…
元気いっぱい。
これほど元気なのであれば、ひょっとして海に持っていっても元気かも。
ふとそんなイタズラ心が芽生えてしまい、実行してしまいました。
それが冒頭の写真。
私も以前は水族館の飼育スタッフの端くれだったから、無脊椎動物たちが魚以上に水質変化に敏感なことはよく承知している。
であれば、じっくりジワジワ、少しずつ水納島の海水に慣らせてから…のほうがいいことは百も承知ながら、手っ取り早く洗濯ネットに数匹入れて持ち込み、海中でそおっと出してみたところ……
なんと元気なクルマエビ!
もっとも、このままダッシュで逃げ切るほどの体力が無かったのか、泳いだ先で全員おとなしくなった。
もちろん全員回収。
いわば遊び心を満足させただけのことながら、エビといえば尻尾を使ってビシュッビシュッと後ろ向きに移動するものと思っている方々にとっては、お腹の下にズラリと並ぶ腹肢を上手に使って前進する様子はけっこう新鮮に映るはず。
また、「活」車えびがいかにイキがいいかということもよぉ~くご理解いただけるに違いない。
この遊び心、けっして無駄ではなかった?