甲幅 5mm
エビエビカニカニマナコになっていたその昔は、ウニ・ヒトデ・ナマコといった棘皮動物のサーチが日常になっていた。
当時はいい季節でもヒマな日が多く、海水浴場もコロナ禍直前のような狂乱状態とは程遠い過ごしやすい場所だったから、わりと海水浴エリアで潜る機会も多かった。
他の稿でも触れているように当時の海水浴場エリアは魚たちはもちろんのこと棘皮動物をはじめとする無脊椎動物も数多く、サーチする対象にはまったく事欠かなかったから、今に比べれば遥かに潜っていて楽しい自然環境だったのだ。
このカニに初めて出会ったのも、その当時の海水浴場エリアでのこと。
白っぽい体にはこれといった特徴はないものの、「ナガウニの枝間でアヤシゲにチョロチョロしているカニ」というのは珍しい。
こんなカニもいるのだなぁ…と感心しつつ、その後再会を期してビーチで潜るたびにナガウニサーチをしてみても、当時ナガウニはたくさん観られたというのにこのカニの姿はどこにもない。
ひょっとして、千載一遇級のレアクラブだったのだろうか。
発見後も長らく正体がわからなかったのだけど、名著「海の甲殻類」が刊行されたおかげでようやく見当がついた。
どうやらトウヨウヤワラガニであるらしい。
図鑑によると、このカニはナガウニにいることもあるものの、クモヒトデにも共生するし、ガレ場の転石の下などにもいるようだ。
そしてナガウニにいる率は、その中でもかなり少ないという。
そりゃナガウニサーチをしても容易には再会できないはずだ。
後年、ボートが長期入院していた冬場にビーチで潜っていただんなが、このカニと遭遇した。
別目的でナガウニサーチをしていた時に出会ったそうで、ナガウニにいる状況は同じながら、ナガウニのトゲ比からしても私が出会ったものより随分大きいことがわかる。
だんなによると、しばらく撮っているうちに、カニはナガウニから離れたという。
ナガウニの棘の合間にいることにさほど執着はないように見えたそうな。
というか、ナガウニにいるよりもこうして小礫の上にいたほうが、カモフラージュ的にはよほど便利そうでさえある。
となると、ナガウニに載っていることを「共生」と言い切ってしまっていいのだろうか。
ホントはこのカニは海底の小礫の隙間にウヨウヨいて、隠れることができさえすればそれが礫であれナガウニであれクモヒトデであれなんでもいい…ってところなのかもしれない。
もっとも、四半世紀以上の間にたった2個体だけの記録で何がどうと言えるわけもない。
トウヨウヤワラガニ、実は水納島にたくさんいるのか、レアなのか。
居場所としては海水浴エリアのような浅い内湾環境が好みらしいから、真相を知るにはリーフ内を徹底調査するしかあるまい。