体長 10cm(推定)
このシャコは、その名もウニシャコという。
だんなに言わせれば、ウナギイヌなみの異種混淆な強引なネーミング、ということになる。
強引かどうかはともかく、寿司職人が聞いたらにわかには納得したくないかもしれない。
名前の珍妙さのわりには一般的にはそれほど珍しいシャコというわけではないようながら、私自身はこれまであまり出会ったことがない。
ひところまではたった3個体だけ、それも1年に1度、しかもそのうち2度はゲストをガイドしているときだったから、地団太踏んで涙をのんで、網膜に焼き付けるにとどまった。
名著「海の甲殻類」が刊行される以前はどの図鑑にも載っていなかったから、当時の私はウニシャコという名など知る由もなかったものの、最初に目にしたときに「はて、誰だこのシャコ?」となった。
図鑑のおかげでウニシャコという名を知るようになっていた2001年7月に、またしてもウニシャコはゲストをご案内中に出現した。
これまた網膜だけで終了か…と諦めていたところ、その年はカメラを携えて再訪したときにも同じ場所に居てくれたので、ようやく撮ることができたのが↓これ。
このウニシャコは、翌月までいてくれたものの、その後はパッタリ消息が絶えてしまった。
ようやく再会できたのは、2017年のこと(冒頭の写真)。
それまで出会ったことがあるウニシャコに比べると随分赤っぽい個体が、直径2cmほどの穴から顔を覗かせていた。
ただしこれまた最初はガイド中だったため記録には残せなかったのだけど、その時初めて私はウニシャコがウニシャコたる所以を知った。
ああ、これは撮っておきたい!
…という願いが天に通じたのか、この赤っぽいウニシャコ君はその後もずっと同じ場所の同じ穴に定住してくれていたおかげで、カメラ片手に再訪した際にも、ウニシャコの所以を観ることができた。
その所以とは…↓これ。
まさにウニ!
これはシャコの尻尾の先の部分で、巣穴の中で体をターンさせるとこうなる。
このウニ尻尾を見せているのは一瞬のことではなく、この状態のまま止まっていたから、おそらく巣穴防御上の対応ということなのだろう。
いやあ、それにしてもこのウニっぷり!
その名を知って以来、「どこがウニ?」というおよそ20年に渡る長い間の謎は、まさに百聞は一見にしかずで解決だ。
ところで。
このウニシャコの名を初めて知ることとなったのは、前述のとおり名著「海の甲殻類」による。
初めて名の由来を知り、久しぶりに件の図鑑のウニシャコの項をひもといてみると…
(前略)尾節にウニに似たとげがあることが和名の由来。危険を感じると穴の中で反転し、尾節を穴の入り口に向けてふたをするようすを観察できる。
書いてあるじゃんッ!
17年前から…。
でも解説を読んだだけでこのウニウニ尻尾を想像することはムツカシイものなぁ…。
ちなみにこの赤っぽいウニシャコは翌年も同じ穴にいたうえ、その後も同じ場所にしばしば姿を現しており(同一個体かどうかは不明)、一昨年(2020年)にもその姿があった。
またその間別の場所で、体幅5mmほどの激チビウニシャコにも会っている。
手前の金属光沢は指示棒の先だから、いかに小さいかおわかりいただけよう。
ウニシャコというといまだに私にとっては「おっ?」となるシャコながら、こんな小さな子も含めれば、「さほど珍しくはないシャコ」ということなのかもしれない。
要は「見えるか見えないか」にかかっているのだろう…。